見えない女  


 2013.11.30    旅行した気分になる? 【見えない女】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

旅行ミステリー短編集。それぞれ、ある男たちが海外で奇妙な経験をする。ミステリーとしての面白さは微妙だ。旅先の幻想的な雰囲気と、土地の歴史や伝統などミステリーとは直接関係のないよけいなうんちくが多いので、この部分を楽しめる人はいるのかもしれない。その場所へ旅行した気分になり、ミステリーを楽しむ。それは理想的なのだが、自分にはできなかった。

旅先でのアバンチュールや事件は、定番的ではある。トリックがメインというよりも、その先にある旅の描写が、作者が真に描きたかったことのように思えた。旅先では何かが起こるのではないかというワクワク感は、作中から伝わってくるのだが、ミステリー的なワクワクは少ない。

■ストーリー

1986年冬。「私」はパリ=ダカールラリーが終了したばかりのフランスで、不思議な女に出逢った。職業は不明、バーではウインクひとつで支払いが済み、大きな家に一人で住み、おまけに大変な美人ときている。パトロンでもいるのだろうか?(「見えない女」より)車好きの著者ならではのひねりをきかせた、異色の旅行推理集。

■感想
「インドネシアの恋唄」は、3つの短編の中では一番好みかもしれない。ある学生は抽選で選ばれインドネシアへタダで旅行できることになった。旅先では美しい女性と出会い…。学生がインドネシア旅行に当選した原因と、あいまに登場する怪文書によりミステリー感は強い。

インドネシアで出会った美しい女との逃亡の旅には秘密があるのか。女自体に何か謎があるのか。勝手に深読みしたが、思いのほかオチはシンプルだ。タダで海外旅行できるなんて、そんなうまい話はない。わかってはいるが、騙されてしまうのが人間の性だ。

「見えない女」は、女優の悲しさというか厳しさを表現している作品だ。ある男は映画製作のためやってきたフランスで不思議な女に出会う。正体は不明だが、美しく金持ちのように見えたのだが…。美しい女優は常に美しくなければならない。

足先から頭のてっぺんまですべて美しくなければならない。映画で手や足のパーツがアップされても、それに耐えられる美しさが必要だ。非現実的だが、厳しい女優の世界では、ありえないことではないように思えてくるから不思議だ。

「一人で食事をする女」は、女がひとりでいるのには、必ず何かしらの理由がことを描いた作品。美しい女であれば、なおさら理由がある。ドイツが東西に分裂していた時代の物語なので、違和感はある。最後はドイツ分裂ならではのオチなので、面白さはある。

ただ、ドイツの名所や歴史をツラツラと描かれているので、かなり冗長に感じられた。それらがトリックに大きく影響するならば、興味を持って読むことができるが、明らかに無関係と思われたので、つい、流し読みしてしまった。旅の描写を楽しむには、それなりの知識が必要で、自分にそれがなかったというのが大きいのだろう。

インドネシア、フランス、ドイツに詳しい人は楽しめるだろう。




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