迷路館の殺人  


 2011.3.18  迷路の醍醐味を感じられるか? 【迷路館の殺人】

                      評価:3
■ヒトコト感想
地下に巨大な迷宮が存在する迷宮館。このシリーズの定番ともいえる不思議な洋館で繰り広げられる惨劇。いきなり冒頭から小説を読むということからスタートし、あとがきまで存在する。少し特殊な状況からどのようなトリックが待っているのか。迷宮や隠し扉的なものは、まぁよくあるパターンだ。小説の内容に見立てた殺人が起こり、不可解な事件の謎を解き明かすのはいつもの島田だ。ごくオーソドックスなミステリで、ちょっと違うのは誰かが書いた小説を読み進めるという流れだ。そのため、作中で小説が終わると、その後は別のオチが待っている。特別驚くようなオチではないが、こんな形式は初めてなので多少のとまどいというのはあったかもしれない。

■ストーリー

奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた四人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった。

■感想
不思議な迷宮の中で繰り広げられる惨劇。偉大な小説家の遺産を引き継ぐためのコンテストが開催され、そこで事件は起こる。定番として、何か事件が発生すると必ず外部への連絡と、外に出る手段がなくなっている。現実感のない設定ではあるが、ミステリでは定番である設定の数々。資産家とその執事やお手伝いさん、そして館に招待された人々。まず招待客が小説家四人とそのほかということで、個性としては弱いような気がした。トリックの根幹に関わる部分として、四人の小説家は外せないのだろうが、その他のメンツはあまり必然性というのを感じなかった。

迷宮や隠し扉のたぐいは、ちょっと当たり前すぎるように感じられた。特別目新しくはなく、大きな衝撃もない。ミステリの定番だが、隠し扉が密室のトリックと言われても、すんなりと納得はできない。心の中ではもっと違った形のオチを求めてしまう。見立てに関しては、最初は作中の登場人物たちと同じように、その必然性に悩んだが、途中でトリックが予想できてしまった。トリックがメインとしては強烈なインパクトがあるわけではないので、全体的に印象が弱いように感じられた。

劇中劇的に、作中で小説が終わっている。そして、その小説の作者というのが物語りの重要な鍵となる。読んでいると、そこで終わったような感じだが、実はそれは小説作品が終わったというだけで、その後島田とのやりとりがスタートする。大どんでん返しといえなくもないが、そこまで衝撃はなかった。トリックが全面的にすべて覆されるようなものではなく、基本的には小説作品内で描かれたことがメインのトリックだからだ。かなり特殊な作品というのはわかるが、その特殊さをそこまで楽しめなかった。

コテコテのミステリにほんの少し特殊な味付けがしてある作品だ。




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