2012.4.16 モテなくてもいいじゃないか 【間宮兄弟】
評価:3
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■ヒトコト感想
映画版を先に見たために、頭の中で想像するのは、映画のキャストたちだ。映画の印象そのままに、本作でもほのぼのとした印象をうける。日々の煩わしことをすべて忘れ、間宮兄弟のようなマイペースな生活を送りたいと思えてくる。何かにつけて他人の目を気にしがちな現代人にとって、間宮兄弟のような生活は夢のまた夢かもしれない。ある意味悟りを開いたような、そんな印象すらある。たとえ女性にモテなくても。仕事がつまらなくても。女性に気持ち悪がられても。家に帰り、兄弟と共に楽しく趣味に生きればすべてを忘れられる。ストレス社会でアクセク働く現代人には、ぜひともこの間宮兄弟を読んでもらいたい。心が軽くなり、明日への活力が湧いてくることだろう。
■ストーリー
もてなくとも幸福に生きる兄弟の日常の物語女性にふられると兄はビールを飲み、弟は新幹線を見に行く。そんな間宮兄弟は人生を楽しむ術を知っている。江國香織がもてない男性の日常を描く。
■感想
作者らしくない。作者の今までの作品とは対極に位置するような作品だ。甘い恋愛やゾクゾクするほどの女性の心理描写はほぼない。あるのは、間宮兄弟という特殊な二人の兄弟の生活だけだ。兄は長身のガリで弟はデブ。対照的な二人だが、信じられないほど仲が良い。成人になっても、兄弟二人っきりで生活するなんてのはマレだろう。ただ、本作の明信と徹信二人の生活を読んでいると、兄弟だけの生活も悪くないと思えてくる。週末になれば、読書の日や映画の日があり、平日は好きな野球チームのスコアをつける。出世競争とは無縁だが、真の幸福とはこういうものなのだろう。
本作を読んでいると、日々アクセク働く自分が馬鹿らしくなってくる。兄弟の悩みはあるが、まずはどうやって日々を楽しむかというスタイルはものすごく羨ましくなる。将来どうなるかなんてことは考えない。それは世間の常識に照らし合わせたものではなく、兄弟独自の価値観で幸せな生活を送っている。周りにどう思われようとも、自分たちの趣味へひた走る。兄弟だけでなく、その母親もどこかのんびりとし、世間のわずらわしさとは無縁のように思えてくる。この母親があってこそ、兄弟が幸せに生活できるのだろう。
本作では、一部ドロドロとした離婚問題がある。ただ、それらさえも、兄弟の日々の生活のちょっとしたスパイスになる程度で、根本は変わらない。こんな兄弟は存在するはずがない。と思いつつも、映画を見たときの衝撃を思い出し、文章を読みすすめるたびに、羨ましさばかりがつのる。女性や仕事や世間体などすべてを気にしない生活は、およそ普通の人には無理だ。しかし、本作を読むと、いつの間にか間宮兄弟になったような気分となり、「今日は早く帰って、ビールを飲みながら野球観戦だ」なんてことになるだろう。
毎日仕事に忙しいサラリーマンには、ぜひとも読んでもらいたい作品だ。
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