魔界探偵冥王星O デッドドールのダブルD  


 2011.1.24  ぶっ飛んだ設定もなんその 【魔界探偵冥王星O デッドドールのダブルD】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

どうやらシリーズらしく、すでにいくつか別の作家が書いた作品があるらしい。いきなり本作を読むのはどうかと思ったが、意外なほどすんなり物語りに入り込むことができた。もちろん、シリーズを読んでいた方がより楽しめるだろうが、読んでいなくても問題はない。相変わらずぶっ飛んだ設定だが、これは作者の考えではなくシリーズがそうだからだろう。吸血鬼や人狼と戦い、魔界探偵としてミステリーを解き明かす。結局は冥王星Oがピンチに陥ると口からでまかせの推理を繰り返し、窮地を脱していくという物語だ。【死体人形師】が登場するなど、死に対してなんらこだわりがないように思える本作。スピード感溢れる展開はすばらしいが、読んでいて深夜アニメを見ているような感覚になった。

■ストーリー

「“冥王星O”。“吸血鬼”の一人娘を保護してもらいたい」魔界探偵の俺に下される指令は、いつも無茶なもんばかりだが、その中でもこいつは格別だ。なるほど、俺に死ねってことかよ。だが…“彼ら”の館で待ち受けていたのは、不死者の首無し死体。死ねないヤツが死んで、生きたい探偵は化け物に命を狙われる。

■感想
作者の作風はライトノベルにあっているのかもしれない。吸血鬼の一人娘を保護しろという命令を遂行しようとする冥王星O。【窓をつくる男】や【死体人形師】など非常に特殊なキャラクターを使い、物語にインパクトを与えている。吸血鬼と人狼と人間たちの争いというのが根底にあり、それに巻き込まれる形で冥王星Oが四苦八苦する。【死体人形師】の存在によって、死んだものがすぐに生き返る世界では、ほとんど死に対しての緊張感はない。そのため、ぶっ飛んだ行動ばかりがクローズアップされるようになる。

【窓をつくる男】の能力は面白い。へたしたらちょっとしたマンガのキャラクターとしても十分通用するようなものだ。手を触れずに人間の体から血を抜き出す吸血鬼に、凶悪な爪を持った人狼。それらに人間の特殊兵器が交じって戦いを繰り広げる。冥王星Oはとりあえずは人間なので、人間よりの行動をするようだが、なんだかよくわからない展開なのは間違いない。ミステリー的な要素は、特殊な能力を持つ者が多すぎるためにあまり意味はない。密室殺人についても、ほとんどトリックなどは必要なくなってしまう。

結局はミステリー風に見えていて、魔物と人間の戦いということで終わっている。冥王星Oの存在についてのバックグラウンドを知らないので、どういった経緯で【窓をつくる男】の言いなりになっているのかわからないが、本作に限っていえばそれでも十分に楽しめる。圧倒的な力を持ち食物連鎖の頂点にたつものたちを、人間の知恵と勇気でそのヒエラルキーをひっくり返す。すっきりとするが、結末間近になるとほとんどアニメを見ているような感覚に陥ってしまう。

この設定では、どんなぶっ飛んだことが起きようとも驚くことはない。




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