魔神の遊戯  


 2013.6.26      叙述トリックに騙されて 【魔神の遊戯】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

御手洗潔が海外で活躍する。特殊な能力をもつと思われた男が、ティモシー村での事件を予言する。そして、その予言どおりに事件が起きる。物語のスタンスとしては、男が頭に思い浮かべる情景が本当に未来のことを予言しているのか?ということと、実際に起きた事件は誰が何のために引き起こしたことなのか?だ。

予言と並行し、ユダヤ教とイスラム教の対立の神話が語られ、その神話に登場する魔人が、あたかも事件を起こしたような流れとなる。読者は魔人犯人説を信じたりはしないが、状況的にそれしかありえないような流れとなる。そこで登場する御手洗が鮮やかに事件を解決する。いつものパターンといえばそうだが、最後にちょっとした仕掛けがある。

■ストーリー

ネス湖畔の寒村ティモシーで、突如として発生した凄惨な連続バラバラ殺人。空にオーロラが踊り、魔神の咆哮が大地を揺るがすなか、ひきちぎられた人体の一部が、ひとつ、またひとつと発見される。犯人は旧約聖書に描かれた殺戮の魔神なのか?名探偵・御手洗潔の推理がもたらす衝撃と感動…。

■感想
未来が見える男に話を聞く御手洗。今回はいつもの狂言回し役である石岡は登場しない。が、代わりにティモシー村の飲んだくれ男がその役割を担っている。メインはティモシー村で起こる不可解なバラバラ殺人事件だが、そこに検死を行う御手洗が絡んでくる。

殺害方法が普通であるならば、不可解さはない。強い力で引きちぎられたような切り口。そして、ありえない場所へ放置される体のパーツ。人間わざとは思えない状況が、神話の魔神を犯人と連想させる流れとなっている。

物語は男の予言がことごとく一致することと、事件の不可解さから、着地点が見えない状態となる。読者は、未来の見える男が犯人なのではないか?という想像を働かせ、物語もその方向へと進んでいく。が、全ての謎を解く場所へ入ると、そこから一気に物語が動き出す。

今までの御手洗シリーズでは、御手洗は絶対に間違えない。御手洗の言うことはすべて真実だという先入観があった。それを逆手にとり、驚きの結末がまっている。叙述トリックなのかもしれないが、かなりの驚きだ。

オチがわかると、すべてに納得ができる。未来を予見した男が、どうやって未来を見たのか。それは本当に未来の映像だったのか。御手洗がすべての謎を解き明かすのは、いつものことだが、相変わらずなぜそこまでわかるのか?という疑問は拭い去れない。

宗教の話や神話がでてくるため、物語全体に神秘的な雰囲気がただよう本作。日本を舞台にした和風のミステリーも良いのだが、御手洗は海外の不可思議な事件に挑戦する方が、雰囲気にマッチしているように思えてならない。

御手洗のいつもの横暴さをあまり感じないのは、石岡がいないからだろう。




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