2012.5.25 恐怖は想像力だ 【恐怖コレクション】
評価:3
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■ヒトコト感想
恐怖というのは、どういった時に感じるのだろうか。作者の思う恐怖を、わかりやすく描いている。小説のこんな場面が恐怖だとか、実生活でのこんな出来事が恐怖だとか。小説作品について、どれだけ恐怖だと説明したところで、伝言ゲーム的になり、なかなかその恐怖は伝わらないだろう。にも関わらず、作者は自分の感じた恐怖を伝えようとする。おそらく、作者が感じた恐怖ほどではないが、微かに恐ろしさは伝わってくる。特に、作者が表現した場面描写を頭の中に思い描くと、思わず鳥肌が立ってくる。文章で恐怖を伝えるというのは難しいが、怖いんだろうなぁ、という感想をもつことはできた。
■ストーリー
作者が感じた恐怖。どんなものが恐ろしくて、何が真に心にしみこむ恐怖なのか。ブラックジョークの名手である作者が恐怖を語る。
■感想
作者の作品の中には、変な恐怖に満ちているものがある。残酷なものをベースに構築されたブラックジョークなどは、変にユーモラスな終わり方をしていると、よけいに恐ろしくなる。残酷で悲惨な状況にも関わらず、普段と変わらない生活をする。自分の常識にあてはめ、そこから逸脱し、なおかつそれが当たり前のように表現されると、恐ろしくなる。具体的に例をあげるのは難しいが、人の想像力に起因した恐怖というのが、一番心の奥底に深く残っているかもしれない。
恐怖を感じた小説作品以外に、作者が実生活で感じた恐怖も描かれている。そこでも、作者は実際に目で恐怖の元凶を見たわけではなく、その雰囲気が恐ろしいと語っている。息子が自分の後ろを指差し、尋常ではない視線で、なにごとかを呟く。その瞬間、自分の後ろにはいったい何がいるのか?泥棒なのか、それとも…。現実的な泥棒というイメージよりも、得体の知れない何かの方が恐ろしいと語る作者。結局は、恐怖というのは、人の想像力がすべてということだろう。想像力が欠如している人は、当然、恐怖を感じる機会も少ないはずだ。
本作は恐怖エッセイということで、作者が恐怖にまつわるエピソードを語っている。そんな中で、なにげに一番怖かったのは、作者が夢で見た、真っ暗な夜の海で泳ぐという場面だ。一面夜空で、岸には灯り一つない。海は暗く、どっちが岸かわからない状態。そんな場面を自分に置き換えて想像したとき、恐怖で足がすくむ思いがした。自分がもし同じように夜の海のど真ん中にいたとしたら…。リアルに想像できる状況だからこそ、より恐ろしさが際立つのだろう。
人によっては、恐怖のポイントが違うかもしれない。
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