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　2013.7.11 　　　 思いもよらない人物の正体　【交換殺人には向かない夜】

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 評価：3
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■ヒトコト感想
鵜飼探偵シリーズ。このシリーズの肝であるユーモアの部分は、本作でも健在だ。さらに、今回はトリックの部分でも驚かされた。あるひとりの人物が、現在、過去、そして会話する人によって様々な人物へと姿を変えていく。まさかそれらの人物がすべて同一人物だとは思わなかった。タイトルにあるように交換殺人が行われる。それは複雑なトリックなのだが、最後の説明でしっかりと納得できる。

シリーズを読んでいる人ならば、キャラクターの面白さも楽しめることだろう。時間軸をぼやかすトリックと、巧みな叙述トリックで、読者をけむにまく。終盤になるまで、まったく事件の全容はつかめてこない。が、最後にしっかりとまとめてくるのはさすがだ。

■ストーリー
不倫調査のため、使用人を装い山奥の邸に潜入した私立探偵・鵜飼杜夫。ガールフレンドに誘われ、彼女の友人の山荘を訪れた探偵の弟子・戸村流平。寂れた商店街で起こった女性の刺殺事件の捜査をおこなう刑事たち。無関係に見えた出来事の背後で、交換殺人は密やかに進行していた…。全編にちりばめられたギャグの裏に配された鮮やかな伏線。

■感想
本作のポイントは、視点がそれぞれ行動するグループによって違うということだ。不倫調査を行う鵜飼たち。さくらと買い物に行く戸村。事件を調査する警察。それぞれに登場するその他の人物。それぞれのグループでなにかしら事件めいたことが起こるのだが、その時点ではまったく流れが見えてこない。

関係がありそうだが、はっきりとした確証はもてない。そんな状態で終盤まで物語が進んだところで、かなり衝撃的な事実が登場してくる。３つのグループでまったく別人と思われた人物が、実は同一人物だということ。本作はこれが驚きのすべてかもしれない。

鵜飼たちの面白会話、戸村とさくらのヘンテコカップル。そして、いつもの刑事たち。今回は、鵜飼はそれほど活躍しない。強烈なインパクトがあるのは、間違いなくあるひとりの人物だ。交換殺人のトリックもすんなりいかない。様々な伏線で、当たり前の交換殺人ではない、別の方式で描いている。交換殺人というと複雑になりがちだが、本作はシンプルにまとめられている。時間軸のズレとシンプルなトリックで読者を騙している。

本シリーズは回数を重ねるごとに、新たなキャラクターが登場する。いつのまにかメインキャラとなったサクラや朱美。本作でも強烈なインパクトを残すキャラが登場する。シリーズのキャラが増えることにより、面白さは倍増している。

間違っても戸村とさくらがくっつくことはないが、新たなキャラの登場で、さくらの天然ぶりがより強烈に発揮されることだろう。なんだか現実にさくらのような人物がいたら迷惑だが、他人事として見ると非常にかわいらしく感じてしまう。

シリーズの良い部分が凝縮されている。