金平糖の降るところ  


 2013.4.18     なぜ別れ、付き合うのか 【金平糖の降るところ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

自由奔放な姉妹と、振り回される男。不倫、略奪愛と複雑な人間関係ではあるが、そこにドロドロとした流れはない。どこかさわやかで、南米の自由奔放な香りがただよってくる。幸せなはずの男女が突然別れるなんてことはよくある話だ。ただ、別れを切り出された方は、理由がわからず困惑する。

本作は、別れをきりだされた方と、きりだした方のどちらも、はっきりとした理由がないまま、別れようとしている。女を追いかけ、はるか地球の反対側までやってくる男。単純な男女の恋愛模様だけでなく、周りをも巻き込む、込み入った人間関係の物語のように思えてくる。男と女は難しい。それと同じレベルで人と人の関係も難しいのだろう。

■ストーリー

ブエノスアイレス近郊の日系人の町で育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドを“共有すること”をルールにしていた。留学のため来日したふたりだったが、誰からも好かれる笑顔の男・達哉に好意を抱く。しかし達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、日本で達哉と結婚。

ミカエラは新しい命を宿してアルゼンチンに帰国する。20年後、佐和子は突然、達哉に離婚届を残して、不倫の恋人とともにブエノスアイレスに戻る。一方、妹のミカエラは多感な娘に成長したアジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけ、アルゼンチンにやってくると…。

■感想
感情移入するのはどのキャラクターだろうか。自分は達哉に感情移入してしまった。突然男を作ってアルゼンチンへ向かった妻に対して、怒りがわいてくるにせよ、はたして自分は追いかけるだろうか。一緒に逃げた男が、自分の知っている男となれば、なおさら怒りは強くなる。

仮に義理の妹となんらかの過ちがあったとしても、妻に対する怒りというのはおさまることがないだろう。妻側の心境が描かれてはいるが、その内容には到底納得できるものではない。男からすると、なせ?という思いばかりが強くなる作品だ。

妹のミカエラとその娘アジェレン。この親子もまた強烈だ。母親が勤務する企業のボスと不倫する娘。なんだか複雑すぎて、普通の感覚ではない。入り乱れる男女の人間関係。それがブエノスアイレスに集まるとき、なんらかの化学反応が起こるかと思いきや…。何もかわらない。

全体としてさわやかな印象を植え付けるのは、さわやかな風景を事細かく表現しているからだろう。ドロドロの不倫恋愛を続けるすぐ窓の外では、キラキラと輝く海が見える。ミスマッチだが、風景の美しさがドロドロ感を凌駕している。

オチは特にないが、この複雑な関係性は読む人を引き付けて離さないだろう。突然崩壊した夫婦。妻が元教え子とアルゼンチンへ逃げる。一方義理の妹親子は、娘が母親の上司と付き合い、それも上司の奥さんにバレてしまう。

複雑な人間関係で、終わりのないドロドロとした暗黒へ向かうだけかと思いきや、登場人物たちはなぜかあっけらかんとしている。このカラリとしたさわやかさはなんなのだろうか。家族を捨ててアルゼンチンへ向かう田淵の心のありようも見えない。が、愛に生きるということだけが強烈に表現されている。

真面目な現実を生きている人は、本作を読み空想にふけるのも良いだろう。



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