コクリコ坂から


 2013.3.5     みずみずしさが目にまぶしい 【コクリコ坂から】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
昭和の時代の青春物語。ジブリという先入観を捨てて見れば、非常によくできた、感動できる作品だ。監督が違うので、単純に今までのジブリ作品のイメージを引きずってはダメなのだろう。歴史と思い出のつまった施設を守るために、高校生の男女が奮闘する。そこで自然発生する恋愛感情。いつものジブリ作品の絵柄が、恋愛を描いたとしてもどこかクリーンでさわやかなイメージを植え付ける。昭和の時代に強い思い入れがある人は、ノスタルジックな気分になることだろう。戦後の印象がない自分としても、昭和の雰囲気というのは変な懐かしさがある。何もかも便利になりつくした現在も良いが、古き良き時代を思い出すと、少し涙がでそうになる。

■ストーリー

スタジオジブリと宮崎吾朗監督が、親子2世代にわたる青春を描いた長編アニメ。太平洋戦争が終わって18年。明治に建てられた歴史と思い出の詰まった高校をめぐり、小さな紛争が起こる。そんな中、ある高校生の男女が心を通わせ助け合っていく。

■感想
戦後の青春物語。時代的な描写がすばらしく、軽やかに動く主人公たちが、さわやかで目にまぶしい。ドロドロに汚れた大人の目で見ると、本作の登場人物たちは青春全開、何もかもがうらやましく感じてしまう。本編の流れとは別に、昭和の時代独特の雰囲気が興味深い。料理の描写ひとつとっても、目を引かれてしまう。ガリ版印刷や、オート三輪など、その時代だからこそ存在するものを目にすると、知らないはずなのに懐かしく感じてしまう。何がそうさせるのか。刷り込まれた、日本人としての心が震えるような気がした。

恋愛物語としての面白さや感動はそれほどでもない。歴史ある建物が取り壊されることを防ぐために奔走する高校生たちの、とんでもないパワーを感じると、むしょうに楽しくなる。ボロボロの建物を皆で協力して掃除する。文化祭の準備をするように、生徒たちが男女入り混じって目的のために邁進するのは、見ていてワクワクしてくる。自分の過去の経験に照らし合わせてみても、その時代というのは、もしかしたら青春を一番感じることのできる時期なのかもしれない。あの一体感を、本作を見ることで思い出してしまった。

親子2代にわたる青春物語。ラスト間近の写真撮影の場面では、涙がこぼれ落ちそうになる。戦争という無情な出来事により、死地へと赴く若者たち。それらの人たちの犠牲があってこそ、今の平和があることを思い出させられる場面だ。恋愛物語においても、ひとつの答えとなる場面ではある。高校生たちに、純粋でまっすぐな、ジブリ作品らしい曇りのない視線で語られると、しびれてしまう。このまぶしさこそが、ジブリ作品の真骨頂なのだろう。ファンタジー感はないが、すっきりとした前向き感がある。

昭和の時代の高校生たちのみずみずしさが目にまぶしい。



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