北の零年


 2011.8.4  時代にとりのこされた者たち 【北の零年】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
新時代にとりのこされた人々と、新しい時代を切り開いた人々。冒頭は北海道の大地を切り開くという描写から始まり、その後時代は大きく動いていく。やりきれないのは、時代が変わることについていけない昔ながらの人々が、新しい時代にとりのこされていくシーンだ。侍として町人に対して権力をふりかざしていた者たちが、時代の移り変わりによって、下働きの立場となる。時代の流れに乗れた者と乗れない者。本作の中で一番インパクトがあるのは、間違いなく小松原英明が政府の使いとして村に戻ってきたシーンだ。今までの渡辺謙のかっこいいイメージを、根底から覆すようなシーンだ。このシーンをピークに、辛い対比ばかりが印象に残っている。

■ストーリー

幕藩体制が終わりを告げた明治維新初期を舞台に、北海道への移住を命じられ、過酷な大地で懸命に生きようとする四国・淡路の稲田家の人々を描いた感動のドラマ。

■感想
吉永さゆりと渡辺謙の夫婦というのも、若干の違和感をおぼえたが、全体を通して見ると豪華な出演者たちだ。四国から北海道に移住し、過酷な環境で生活する。序盤では、北海道での生活がどれほど過酷であるかということが描かれている。まだ侍が力を持っていた時期であり、過酷な環境ではあるが、それなりにやりがいのある生き生きとした表情が見てとれた。それが、北海道の地に置き去りにされたという事実が判明すると、そこから大きく時代は変わっていく。本作は間違いなく、人々の立場の変わりようをメインとして描いているのだろう。

村を救うために札幌へ旅立つ小松原。男義あふれる小松原は、苦しみながらも最後には村を救う何かを持って戻ってくるものと思っていた。渡辺謙のキャラクターからしても、そうなるべきだと思っていた。しかし、物語は違う方向へと動いていく。時代の移り変わりにとりのこされていく侍たち。特に惨めなのは柳葉敏朗が演じる馬宮だ。町人にとってかわられ、最終的には自分の妻さえも奪われてしまう。そんな容赦ない下克上の中で、主役である小松原志乃だけが、清廉潔白な身でたくましく生きる。ある意味定番なのだろうが、主役だけが優遇されすぎているように思えた。

ラスト間近では衝撃的なシーンがある。それは小松原英明のシーンだ。今までの渡辺謙のイメージをすべて崩すような、強烈な状況だ。時代の変遷に乗ったというのは、言葉が良すぎるだろう。北海道の未開の地よりも、移動した先が心地良かったとしか思えない。作中では、何かしらの言い訳めいたことが語られてはいるが、それは焼け石に水でしかない。イメージを逆手にとるというか、渡辺謙であれば、絶対にないというようなキャラクターに仕上げている。もしかしたら、見方が浅いだけで、深読みをすれば、英明のキャラクターにも納得できるのだろうか。

最後まで英明がかっこつけたキャラクターであり、開き直った姿を見せないのも、なんだか微妙だ。



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