霧越邸殺人事件  


 2011.3.28  この長さについてこれるか? 【霧越邸殺人事件】

                      評価:3
■ヒトコト感想
700ページ近い物語はとてつもなく長い。そして、霧越邸で繰り広げられる事件をひたすら追っていくのは強烈に疲れてしまう。雪に囲まれ、電話も通じないいつもの洋館ということで、場面の変化がなく、ひたすら登場人物たちが殺されていくのを読むしかない。オーソドックスなミステリであり、小難しい見立ても登場する。北原白秋や童謡などの知識がないので、かなり辛かった。特殊な状況下において繰り返される事件に、次第に気持ちもマヒしていき、後半にはお決まりの犯人推理が始まるのだが、途中で疲れてしまった。それなりの動機も示されているが、あまり納得ができず、アリバイトリックについてもそこまで衝撃はない。作者の作品では最後の最後に大どんでん返しがあるのを期待したが、それもイマイチだった。

■ストーリー

或る晩秋、信州の山深き地で猛吹雪に遭遇した8人の前に突如出現した洋館「霧越邸」。助かった…安堵の声も束の間、外界との連絡が途絶えた邸で、彼らの身にデコラティブな死が次々と訪れる。密室と化したアール・ヌーヴォー調の豪奢な洋館。謎めたい住人たち。ひとり、またひとり―不可思議極まりない状況で起こる連続殺人の犯人は。

■感想
長大な物語をひたすら一つの洋館だけで描いている。決まりきった登場人物たちと、怪しげな洋館に住みついたいわくありげな人々。洋館には登場人物たちの名前にまつわるものがいくつか登場してくる。それを示されて、すんなり納得できるかが、まず本作の最初のハードルだろう。見立て殺人がスタートし、洋館の人々のキャラクターも明らかになってくると、いくつかの推理が展開される。主に動機をメインとして、犯人を探ろうとするのだが、そのあたりでも、これといったワクワク感を持つことはなかった。なんとなく、淡々と物語が進んでいるような気がした。

とにかく長い作品なので、かなりのパワーは必要になる。キャラクターたちの個性がそれほど際立っていないというのもあるが、頭の中に洋館で生活する人々のイメージを思い描くことができなかった。強烈なインパクトがあるはずの事件現場であっても、想像外の洋館ということで、現実味はまったく感じられなかった。最初からそのあたりは放棄しているものと思うが、現実離れした世界にもかかわらず、そこで繰り広げられる事件の見立てが、どうにもスケールが小さいというか、小手先でごちゃごちゃやっているような印象ばかりが残った。

見立てについて、そのネタ元である童謡を普通は知っているものだろうか。はっきりいえば、そのあたりのことはまったく知らなかった。そのせいで物語を楽しめなかったというのもあるかもしれない。世間一般の人はこのあたりをクリアしているのであれば、十分楽しめるのだろう。何かを予言するように洋館が動きだす。名前をモチーフとした何かが壊れると、その人物が死ぬ。そういった超常現象的な部分を残しつつ、現実的なトリックを導き出す。物語は現実的な終わり方を求めたために、随分と小難しく、いろいろとこねくりまわされた印象だ。

この長大な物語を楽しめるかどうかは、見立て殺人を受け入れられるかどうかにかかっている。




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