2013.11.5 まるで上質なビジネス書だ 【県庁おもてなし課】
評価:3
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■ヒトコト感想
「おもてなし課」というネーミングの面白さと、実際に存在することの驚き。民間と役人の時間の流れの違いや、観光業を発展させるために、何をやらなければならないのか。作者の経験もふまえたリアルなつくりとなっている。オマケ的に恋愛の要素が付け加えられており、相変わらずのプラトニック具合に体がかゆくなってしまう。
作中では県庁の掛水が人気作家の吉門に、これでもかとダメだしをされている。それはリアルに作者が県庁の担当者に行ったダメだしらしい。公務員は公務員の辛さがあるのはよくわかる。そして、観光業を発展させるための大変さもよくわかる。ちょっとしたビジネス書のようにすら感じてくるほどの出来栄えだ。
■ストーリー
とある県庁に生まれた新部署「おもてなし課」。若手職員の掛水史貴は、地方振興企画の手始めに地元出身の人気作家・吉門に観光特使を依頼する。が、吉門からは矢継ぎ早に駄目出しの嵐―どうすれば「お役所仕事」から抜け出して、地元に観光客を呼べるんだ!?悩みながらもふるさとに元気を取り戻すべく奮闘する掛水とおもてなし課の、苦しくも輝かしい日々が始まった。
■感想
ダメな仕事ぶりの代名詞となっている「お役所仕事」。それを作品上で思いっきりこき下ろす作者もすごいが、甘んじて受け入れる県庁の体制もすごい。作中での出来事の一部は、実際に作者が経験したことらしい。時間の流れが民間と違う。
県庁の仕事ぶりを批判しているが、作品としてはメリハリが利いていて良い。ダメな状況から良い状況へと変わっていく過程は、ものすごくわかりやすい。ビジネス書の鉄則だが、よくなった結果だけでなく、良くなる過程が描かれているのは、フィクションとわかっていても良い。
今まで高知県にどのようなアピールポイントがあるのかは、よくわからなかった。それが、本作を読むことにより、ものすごく魅力的な場所に思えてきた。実は「おもてなし課」がどんなに頑張るより、作品化されたことが一番高知県にとって良いことだったのではないだろうか。
高知県だけでなく、他県にも特別な観光資源があるのだが、まだ気づいていないだけなのでは?と思えてくる。本作を読めば、他県の県庁の担当者が本作を読み、自分の県のすぐれた部分を見つけ出せるような気がした。
オマケ的に恋愛の要素がある。ちょっと複雑で血のつながらない兄弟の恋愛や、ある種のオフィスラブなど、おおっぴらにできない関係というのが、また一層盛り上がるのだろう。お互い、相手のことを思ってはいるが、それを言葉にしない。
相手の思いをわかっているが、それでもまだ正式に付き合っていないから、となる。まどろっこしいかもしれないが、そのまどろっこしさが良いのかもしれない。あっさりと即物的に深い恋愛関係になるよりも、ジワジワと中高生の恋愛のように進展していくのが、読んでいて楽しいのかもしれない。
恋愛要素を含んだビジネス書といった感じだ。
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