家族狩り 第一部 幻世の祈り  


 2013.4.7     強烈な引きの強さ 【家族狩り 第一部 幻世の祈り】

                      評価:3
■ヒトコト感想
家族関係がテーマの本作。何かしら問題を抱えた者たちが、それぞれの悩みに苦悩する。登場キャラクターたちが、ひと癖もふた癖もあることに興味を惹かれてしまう。トラウマを抱える高校教師。家族が崩壊した刑事。虐待される児童に異常なほどこだわる保護士。

家族関係の中で、とりわけ子供に焦点があてられている本作。虐待される子供や、崩壊した家庭というのは、そうなるまでのプロセスを読まされると心が辛くなる。キャラ描写がリアルなだけに、その印象も強くなる。不可解な事件が起こる序章としては、これ以上ないほど強烈な引きの強さをもっている。作中に心底イラつくキャラクターが登場するのもリアル感を増大させている。

■ストーリー

高校教師・巣藤浚介は、恋人と家庭をつくることに強い抵抗を感じていた。馬見原光毅刑事は、ある母子との旅の終わりに、心の疼きを抱いた。児童心理に携わる氷崎游子は、虐待される女児に胸を痛めていた。女子高生による傷害事件が運命の出会いを生み、悲劇の奥底につづく長き階段が姿を現す。山本賞受賞作の構想をもとに、歳月をかけて書き下ろされた入魂の巨編が、いま幕を開ける。

■感想
何のかかわりもない複数の登場人物。それぞれの状況を描き、何かしら問題を抱えていることを読者に印象づける。人間的な愛情に欠けた高校教師の巣藤。巣藤が巻き込まれた女子高生の傷害事件から、別のつながりが発生する。

児童虐待や女性差別に対して異常なほど反応する保護士。これらのキャラと、家庭が崩壊した刑事、馬見原とが事件を通してどのように関係していくのか。本作の結末間近に発生した事件により、関係者がはっきりとつながるのだろうが、今後の展開がまったく見えてこない。

作中に登場するキャラクターたちがリアルすぎるため、イラつくキャラクターに関しては、異常なほど憎たらしいキャラクターとして描かれている。馬見原に関しても、精錬潔白な刑事ではなく、裏であくどいことを平気でやる不良刑事だ。

それら馬見原の行動だけで、ひとつの物語が作れそうなほど濃密なエピソードがある。キャラクターの個性と、そのキャラが経験してきた人生の奥深さが作品からあふれてくるようだ。薄っぺらなキャラが軽快に動き回るより、何倍も面白さがある。

家族関係になんらかの問題を抱える者たちが起こす事件。それを同じような者たちが解決していく。陰鬱な物語であることは間違いない。しかし、考え抜かれたキャラクターたちの行動から目が離せない。巣藤の家庭に何があったのか。保護士が足を引きずる理由は。

馬見原は、本当の家族と疑似の家族どちらをとるのか。心に問題を抱える女子高生の存在が、ないかしら大きな出来事を誘発しそうな雰囲気があり、ミステリーとしても興味深く目が離せない。

冒頭の印象と衝撃は、野沢尚の「深紅」に近いかもしれない。




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