カササギたちの四季  


 2012.8.11   キャラクター重視の作品だ 【カササギたちの四季】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

リサイクルショップで働く二人。主人公の日暮と店長の華沙々木。基本的に二人がミステリーを解決するという物語だが、まず最初に華沙々木が推理を披露する。それがどれほど突飛で的外れなことだろうと、日暮は否定せず、こっそりと自分ひとりで事件を解決してしまう。リサイクルショップに入りびたる中学生の菜美に対して、華沙々木のイメージを守りたいからのようだ。このチグハグな短編物語には、最初に必ずある定番の出来事が起こる。それは、近所の住職にゴミのようなものを高値で買い取らせられるということだ。この定番の流れが意外にも面白い。メインのミステリー部分は、正直あまり印象にない。ごく普通の、華沙々木が無茶を言うが、日暮が解決するという流れでしかない。

■ストーリー

開店して2年。店員は2人。「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字経営を2年継続中の、ちいさな店だ。店長の華沙々木は、謎めいた事件があると、商売そっちのけで首を突っ込みたがるし、副店長の日暮は、売り物にならないようなガラクタを高く買い取らされてばかり。でも、しょっちゅう入り浸っている中学生の菜美は、居心地がいいのか、なかなか帰ろうとしない―。

■感想
リサイクルショップを営み、そこで事件というほどのものではないが、ちょっとした出来事に巻き込まれる二人。華沙々木がよくある探偵小説風に、”チェックメイト”という決め台詞とともに事件を解決する。が、それは解決とはほど遠い。作者らしいキャラクターで、華沙々木がマーフィーの法則にこだわり、何かとコメントするのが面白い。この無意味なことのように思えるが、インパクトのある言葉を呟くあたりは、伊坂幸太郎のキャラクターに近いかもしれない。本編よりもキャラクターの魅力を重視した作品だ。

華沙々木がとんでもない推理を展開し、勝手に先走るのだが、それをフォローするのは日暮だ。縁の下の力持ちではないが、華沙々木の推理の間違いを指摘するのではなく、隠れて日暮ひとりでこっそりと事件を解決してしまう。真に優秀なのは、この日暮であることは間違いない。ただ、日暮は近所の住職に毎回、粗大ゴミのようなものを高額で買い取らせられるという気の弱さがあり、それがキャラとして立っている。住職と日暮のやりとりというのが、実は一番本作で面白い部分なのかもしれない。

最後の短編では、すでにレギュラー化した住職の寺での出来事となる。ちょっとホロリとする展開であり、華沙々木たちの活躍も楽しめる。物語として内容にはそれほどインパクトはない。しかし、このへんてこなキャラクターたちは、いつまでも覚えていることだろう。短編のシリーズとして続くのかどうかわからないが、キャラクターの面白さと内容がリンクしていないのが少し残念かもしれない。短編であれば凝ったトリックはできないかもしれないが、このキャラクターたちの個性を使えば、印象深い作品がまだまだできそうな気がした。

キャラクター重視の作品だ。




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