カムイ外伝


 2013.2.2     抜け忍の悲しい宿命 【カムイ外伝】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
カムイはかなり昔にマンガで読んだことがある。そのときの印象は、単純な忍者マンガとしての面白さよりも、差別による苦しみから抜け出すカムイの奮闘と、抜け忍カムイを追う、追手たちの恐ろしさにワクワク感をおぼえていた。本作では、差別についてはサラリと流されており、カムイの戦いがメインとなっている。忍者としての軽やかな身のこなしをどのようにして映像化するか気になる部分だが、サラリとCGで処理している。海でのシーンについても、なんだか人物だけが浮いているように見えてしまう。強烈なインパクトはないのだが、忍術の表現の仕方は十分楽しめた。原作で表現された暗い雰囲気を映像でも表現できている作品だ。

■ストーリー

強靭な意志と剣の腕前を持つ忍者カムイは、真の自由を求め、掟に縛られた忍(しのび)の世界を抜け出した“抜け忍”。しかしそれは、裏切り者として追っ手の“追忍”と闘う運命を背負い続けることであった。ある日カムイは、時の藩主・水谷軍兵衛の愛馬をある理由から殺した半兵衛という漁師を助け、それを機に半兵衛の家族に迎え入れられる。しかし、半兵衛の妻はカムイと同じく抜け忍であり、かつてカムイがその命を狙った“くの一”スガルであった。彼女はカムイを追っ手と信じて心を許さない。一方、スガルの娘・サヤカはカムイに恋心を募らせていく。そんな彼女の想いをよそに、スガルはカムイに戦いを挑む。

■感想
原作の面白さは、差別に苦しむカムイが成長し、力をつけていき、抜け忍として凄腕の同胞たちに追われるという部分だ。特に、得体の知れない力を持つ忍者たちには、奇妙な恐ろしさがあった。何度もカムイは死んだと思わせておきながら、生きている。物語全体から漂う終末的な香りというのが、物語にストイックさを付け加えている。本作では、原作と似た物語ではあるが、終末的な香りはあまり感じない。抜け忍として逃げ回るカムイと、それを追いかける者たちの激しい戦いというのが印象深い。

差別についてはほとんど触れられていない。掟にしばられた忍としての過酷な運命。カムイがかつて追いかけたスガルと偶然出会い、そして、殺しあう。忍にとって、掟を破るということは死を意味する。スガルとカムイの過酷な運命と、それと対比するように藩主の面白おかしい生活がある。原作のようにあからさまに差別を表現するのではなく、藩主とカムイやスルガたち下々の者という対比によって、なんともやりきれないもどかしさのようなものが見えてくる。藩主が馬の足を切られたことに怒り狂ったかと思うと、すぐに忘れて違うことに興味を示す。このいい加減さに翻弄される下々の者たちの苦悩がよく現れている。

忍術をどのようにして映像として表現するのか。アバターが当たり前の現在では、それほど難しくないと思うが、漫画的に表現されていた。忍術的な部分には特に問題はないのだが、やはりどうしても気になってしまうのは海のシーンだ。今回、海が多く登場するのだが、明らかに浮いているというか、色が不自然に感じられた。船のセットを用意して、あとから海の映像をCGで加工したのかもしれないが、違和感が拭い去れなかった。真っ青で美しい海の映像なのかもしれないが、目に付いてしまうほどというのは、ちょっとやりすぎのように感じた。

原作を読んでいなければ、これはこれで良いのかもしれない。



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