2012.12.10 ハードルの高いジョジョもの 【ジョージ・ジョースター】
評価:3
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■ヒトコト感想
恐らく本作を手にとる人は、ジョジョ好きというハードルはクリアしているのだろう。ジョジョ好きで、なおかつ第1部から第6部までを読み込んでいなければ楽しめない。ジョジョ好きということだけで本作を手にとると、別の意味で辛いかもしれない。舞城王太郎の独特の世界観を受け入れることができなければ、まったく意味がわからなくなるだろう。マンガでは描かれないifの世界。もし、こうなったら、という同人誌的な雰囲気もあるが、ジョジョ好きにはたまらない対決もある。コアなジョジョファンからすると、世界を壊されたと嘆くかもしれない。舞城ファンでジョジョを知らない人は、読んでもまったく面白さがわからないだろう。読むのには、それなりの前提が必要な、ハードルの高い作品だ。
■ストーリー
ジョナサン亡き後、カナリア諸島ラ・パルマ島でエリナと暮らす少年ジョージ・ジョースターは、リサリサと愛を誓い。成長してパイロットとなり世界大戦の空を駆る。その一方、日本では福井県西暁町のジョージ・ジョースターが運命とともに杜王町へ向かう…。超ドドド級スケールで描く「舞ジョジョ」ここに誕生。
■感想
自分の中では、ジョジョで好きな部分がたっぷり盛り込まれていたので、楽しく読むことができた。エリナが生き残れた理由や、ディオが生存できた理由。究極生命体として強烈な存在感を放ちつつ、マンガでは、あっという間に出番が終わってしまったカーズの存在など、ジョジョ好きにはたまらない要素がある。熱狂的すぎるファンには、「そんなはずはない!」という怒りの気持ちが強くなるかもしれないが、目くじら立てて怒るようなことではない。寛大な気持ちで、ジョージ・ジョースターの新たな冒険として読むのが正しいのだろう。
ジョジョファンというだけで本作に飛びつくと痛い目を見る。なにせ、本作の作者である舞城王太郎は、普通のミステリーを書くことはない。ふざけているのか真剣なのかわからなくなるほど、強烈なミステリーを描いてくる。空間を自由自在に移動するのはもちろん、見立てや、文脈など、およそ整合性があるとは思えないことを強引にくっつけ、ミステリーとして成り立たせている。この強引さと既存ミステリーを揶揄したような文体に慣れなければ、最後まで読みすすめることができないだろう。
舞城ミステリーに耐性があり、ジョジョ好きならば、十分楽しめるだろう。ディオやプッチやディアボロや吉良やカーズが登場し、それぞれの能力を駆使して、何かしらの行動をとる。一番のポイントは、それぞれが戦う場面だ。まさかカーズとディオの戦うシーンが登場するとは思わなかった。そして、カーズがスタンドを使えるとも…。すべての生命を超越した存在のカーズが、スタンドを覚え、ディオと戦う。作中では、ディオが悪者で、カーズが悪を倒す的な方向へ流れているのが、なんとも不思議な感じがした。
ジョジョ好きで、心の広い人は読んでみるといいかもしれない。
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