ジャンゴ


 2013.3.18    タランティーノらしさ 【ジャンゴ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
血みどろの銃撃戦はタランティーノらしい。長時間の作品ではあるが、飽きることがない。黒人のジャンゴとドイツ人のシュルツ。二人の関係の奇妙さと、黒人の中で奴隷の者もいれば、執事の者もいるという不思議な状況。豪華な出演者が、グロテスクな場面もそうと感じさせないパワーを生み出している。

テンポよく進み、黒人奴隷たちの悲惨な状況をシュルツたちが変えていく。黒人奴隷のデリケートな問題を、こうもあからさまに描き、物語として魅力的なものにしている脚本はすばらしい。残酷描写に耐性がない人には辛いかもしれないが、良質な西部劇を見ているような、さわやかな気分になるのは、最後に壮大なカタルシスを味わうことができるからだろう。

■ストーリー

奴隷として売られたジャンゴは、農園に行く途中、ドイツ系賞金稼ぎシュルツに助けられる。彼とならず者たちを始末し賞金を稼ぎ、その後、他の農園に売られた妻を探すためシュルツと旅を続け、遂に妻の行方を突き止めるのだが。

■感想
黒人奴隷の悲惨さと、その黒人が賞金稼ぎとしてドイツ人と協力して白人たちを倒していく。あからさまな黒人差別社会において、差別される黒人と差別される中でも特権的な扱いをうける黒人がいるなど、社会構造としての不思議さがある。

そんな世界で、ジャンゴが特異な黒人として振る舞い、白人だけでなく、他の黒人たちにまで睨まれることになる。ジャンゴが妻を助け出すために向かった農場で、執事としてふるまうスティーブンがその典型なのだが、黒人同士のいさかいというのも、物語の核となる部分だ。

ジャンゴたちが向かった農場のマスターを演じるディカプリオが、強烈な存在感をはなっている。黒人同士の肉体による戦いを観戦し、賭けの対象とする。黒人に対する残酷な仕打ちは、丁寧な口調なのが余計に性格の悪さを増大させている。

農場の主として黒人奴隷に囲まれて生活してきた者にとって、黒人は奴隷でしかない。巧妙な駆け引きと、いつまた残酷な場面が登場するかという、緊迫感あふれる流れになっている。ディカプリオが、ヘドの出るような悪役を演じるのは珍しいだけに印象的だ。

最後には血みどろの銃撃戦がくり広げられる。弾丸が人間の体に突き刺さると、まるで血が詰まった風船が割れるように血しぶきが飛び散る。過剰な演出なのか、それとも、それだけ昔のけん銃は威力が大きいと表現したかったのだろうか。

無意味に飛び散る肉体に、スプラッター描写が苦手な人は、いっぱつでアウトかもしれない。ジャンゴの容赦ない復讐の戦いは、農場のすべての白人たちへ向けられている。ジャンゴが最後に農場へ向かうシーンでは、いつものように監督がチョイ役として登場し、見事に盛大な爆死を遂げる。このシーンだけ妙に笑えてきた。

タランティーノ作品が好きな人には、文句なしにおすすめだ。スプラッター描写に耐性がある人ならば、見てみるのも良いだろう。



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