自動車社会学のすすめ  


 2013.4.8     車好きにおすすめ 【自動車社会学のすすめ】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者の趣味趣向が強烈に伝わってくるエッセイだ。小説ではわからない作者の素顔が見えてくるというのは、貴重な作品であることは間違いない。ただ、その強烈な主義主張というのが、自分の趣味とどれだけ一致するかというのがポイントだろう。

本作は車についての深い知識が必要だ。現在の車なら多少なりとも理解できるが、過去の車の話にはなかなかついていけない。日本人の国民性から、車を読み解き、日本車が世界で売れた理由など、独自の解釈で説明している。車だけでなく、バイクについてもこだわりがあるようで、それらに強い興味がある人は楽しめるだろう。作者の特殊なこだわりと、独特な考え方をどれだけ許容して楽しめるかが、本作を楽しむポイントだ。

■ストーリー

自動車ほど日本人の真の姿を映す鏡はない。対向車がベンツなら左に寄って停るくせに、カローラが来れば思わずアクセルを踏みこむ。一センチでも大きい車に乗って周囲を威圧したがる。日本型車社会は階級意識の投影だ。ポルシェ、ジャガー、BMWなど欧米の車を通じて本格ミステリの旗手が鋭く語る日本人論。

■感想
車に対しての作者のこだわりが伝わる作品だ。江戸時代での現在の車に代わる乗り物の話や、日本社会における車の役割など、車に関する強いこだわりがある。作者はプライベートでも車に強いこだわりを持っているようだ。

単純にかっこいいだとか、スピードがでるから、なんてことが理由ではない。人が操作し、それがどのようにして車に伝わるか。伝わり方がダイレクトなものほど作者は車を運転しているという気になるらしい。いかにもマニアックな車好きが言いそうなウンチクのように感じられた。

ミステリー作家である作者の趣味趣向がわかるのは非常に興味深い。小説作品では、プライベートな部分はいっさい見えてこない。が、本作のような作品では、作者の趣味が露骨にあらわれるので、小説作品とのイメージの違いを受けるかもしれない。

作品からすると、代表作である御手洗潔シリーズの主人公や、吉敷シリーズの主人公をどうしても連想してしまう。本作を読んで気難しいという印象はあまりかわらない。車だけでなくバイクに対しても強烈なこだわりがあり、他人を寄せ付けない独特のパワーがあるような気がした。

車の格が道路での地位へと繋がる。おそらく作者の主張は正しいのだろう。確かに、自分も車を運転していると、軽自動車やカローラにぬかされると、内心少しムカっとする。それが、ベンツだったりBMWであれば、何も思わない。

人は無意識のうちに差別していると言われているが、車であってもその理論は正しいのだろう。小説家という職業がどれだけ過酷なのかわからないが、相当なプレッシャーがあり、そのストレスを解消するために、金があるだけに高級車に走るのだろうと、安易に想像してしまう。

コアな車好きにおすすめだ。




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