2012.1.8 駆け足ですすむ心理戦 【インシテミル】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
原作は未読。ただ、原作は面白いだろうなぁという雰囲気は感じることができた。心理戦というか疑心暗鬼の物語を映像化するには無理がある。スリリングな展開と仕掛けの面白さを直接映像化するのは良いと思うが、全体として雰囲気が軽くなり、ゲームというかお遊び風に感じてしまう。恐らくだが、原作の面白さをほとんど表現できていないのではないだろうか。参加者同士の駆け引きや、ルールについての素材は良いのだが、いまいち伝わってこない。ヘンテコなロボが参加者を連れて行く場面では、すべてがお遊びのように見えてしまう。参加者それぞれの個性はあるのだが、そのバックグラウンドをほとんど紹介することなく、駆け足で進む展開。なんだかすべてがもったいなく感じた。
■ストーリー
時給11万2千円という求人広告につられ、男女計10人が「暗鬼館」に集まった。仕事内容は、「暗鬼館」での7日間を24時間監視されるだけ。鍵のかからない10の個室と10の凶器が参加者に与えられる。何も起きなければ全員に1,600万円以上の大金が手に入るはずだった・・・。しかし、2日目に死者が出る。誰が何のために殺したのか?参加者は疑心暗鬼の深淵に落ちてゆく・・・。
■感想
外部と連絡がとれない状態で、参加者が次々と死んでいく。ミステリーの定番的流れだ。巧みな制約条件下の中で繰り広げられる心理戦。何ごとも多数決で決めるということが参加者同士に微妙な駆け引きを誘発させるはずが…。どうもそのあたりがうまくいっていない。恐らく、原作では細かな心理戦が炸裂したことだろう。映像化されるとやけに大味で、ポイントとなる出来事を駆け足で流れ作業のように進めていくといったような感じだ。ミステリアスな雰囲気はあるが、それらが安いゲームのように感じてしまう。
金に目がくらんで集まった参加者たち。そこには深い理由があるはずなのだが、時間の関係ですべてがサラリと流されている。個別の事情があまり説明されないまま進んでいくと、なんだかよくわからないまま、相手を疑心暗鬼で攻撃したとしか思えない。細かな伏線はそれなりに存在しているのだが、そこにあっと驚くような仕掛けはない。出演者は豪華で、見るべき部分は沢山あるとは思うが、全体的にゲーム的というか、もともと設定が非日常すぎる上に、さらにありえない状況などなかなか受け入れられるものではない。
ラストにはそれなりの驚きが待っているのだが、ここでもなんだかしっくりこない部分がある。結末としては悪くないはずなのに、時間の配分を間違えたような印象すらある。肝心な部分をはしょり、その代わり、ありきたりな格闘描写に時間をとったりと、なんだか全体通して駆け足で進みすぎているような気がしてならない。謎の館で繰り広げられる惨劇。誰が何のためになんてことは不必要だったのだろうか。今までの惨劇の仕返しをするような、もっと壮大なカタルシスが得られると思っていたが、そうはならなかった。
そのうち原作を読むだろうが、おそらく本作よりは面白く感じることだろう。
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