イキルキス  


 2011.6.21  面白フレーズをタイトルに 【イキルキス】

                      評価:3
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■ヒトコト感想
クラスの女子が次々と死んでいく。それも主人公と同じクラスの中学生女子だ。突然始まる理不尽な世界と、特徴のある福井弁。そして、不思議な世界の答えはなに一つしめされない。作中に登場する突然響き渡る鐘の音や、凶行にはしる女子中学生など、物語ははちゃめちゃな世界となる。主人公はほのかに恋心をいだく同級生がなんとか死なないようにと、意味のないことを考える。特徴的な文体で、いつのまにか作者の世界にのめりこんでしまう。”イキルキス”の意味はなんとなくわかる。ただ、物語がいったい何を言いたかったのかは、最後までよくわからなかった。他二編も似たようなもので、作中に登場したフレーズが面白いので、そのままタイトルにしたような感じか?

■ストーリー

物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。青春、恋愛、セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。表題作「イキルキス」他二編を収録。

■感想
「イキルキス」と「鼻くそご飯」と「バッキャラ魔道」。この短編のタイトルを見るだけで、普通じゃないと感じるだろう。起承転結があり、すっきりと終わる作品ではない。リアル風な世界の中に、突如として想像できないような出来事が起きる。女の子を助けるために、イチャイチャしていたら、突然頭上から大きな鐘の音が響き渡る。妄想ではなく、作中の中の現象としてはっきりと描かれている。そこにどういった意味があるのか。深読みしてもよくわからない。強引にこじつけるとしたら、主人公の頭の中で危険、もしくわ幸せを知らせる鐘なのだろうか。ほんとによくわからない。

「鼻くそご飯」はホモとロリコンに対しての嫌悪をこれでもかとアピールしつつ、よくわからない主人公の行動を描いている。トラウマとなった兄弟の死をいつまでも引きずりながら、生きていく男。刑務所であろうと、どこでも気に入らない男の片玉を潰す。ぶっとんだ物語であることは間違いない。そこに漂うなんともいえない苦悩というか、むなしさばかり感じてしまう。「イキルキス」のように荒唐無稽な展開にはならないが、現実的ではない物語なのは確かだ。

「バッキャラ魔道」などは、ただ単に作中に登場した言葉が面白いから、そのままタイトルにしたような感じだ。うすっぺらな家族関係をどうにかしたいのか、それとも事実のみを淡々と語りたいのか。利己主義な母親と利他主義な父親。ヤンキーでやりたい放題な兄に、一人とり残されたようなかたちの主人公。家族関係が希薄というのはわかる。家族をかえりみず、他人を助けようとした父親をどのように家族は思うのか。薄っぺらな関係であるならば、家族よりも、濃密な関係の知り合いの方が良いのか?小説として、正直な作者の告白文のようにも感じた。

舞城作品に慣れていないと辛いだろう。




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