ホテルカクタス  


 2013.9.5     擬人化キャラのほのぼの生活 【ホテルカクタス】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ホテルカクタスという名の古いアパート。そこに住む、”帽子”、数字の”2”、”きゅうり”の三人がおりなすほのぼの物語。最初はあだ名がそうなのかと思ったが、あだ名ではなくそのものずばり帽子であり、きゅうりである。古いアパートに住む三人がきゅうりの部屋に集まり、とりとめのない会話をする。

帽子は自堕落で酒好き、きゅうりは健康マニア、2は少し神経質。それぞれのキャラ設定は明確であり、物語に大きな波風はない。日常のちょっとした出来事を、それぞれの性格で受け入れる。2がことらさいろいろと思うことがあるのだが、帽子ときゅうりが「そんなことより」と軽く流す。それに救われる2という流れだ。このほのぼの感は良い。

■ストーリー

古いアパートの奇妙な住人たち。大人のメルヘン。三階に帽子が、二階にきゅうりが、一階に数字の2が住んでいる石造りの古びたアパート、ホテル カクタス。三人の、おかしくてすこし哀しい日々を描く、詩情あふれる大人のメルヘン。

■感想
古いアパートに住む、擬人化された帽子と2ときゅうり。なんの統一感もなく、この擬人化された三人がはたしてまともに暮らしていけるのかを考えるのは無駄なことだ。あるときは2が帽子を被るなんて描写すらある。頭の中には、それぞれを思い浮かべるが、どうにもはっきりしない。ただ、そんなことを超越したほのぼの感がある。こんなアパートに住んでみたいとは思わないが、気の置けない仲間たちと日々を過ごすというのは、ものすごく憧れてしまう。

帽子は無職、きゅうりはガソリンスタンドの店員、2は公務員。まさにそれぞれの性格を表したような職業だ。帽子ときゅうりには、ささいな悩みはない。あるのは2が日常の悩みを二人に話、二人はそれをサラリと流す。そこで2が怒るかと思いきや、そうだな、と納得してしまう。

悩みは誰かに話すことにより解決する。こんなメルヘンな物語に、仕事の話がでると、途端に現実的な絵が思い浮かぶが、それでも、あくまでも本作はメルヘンな雰囲気を貫き通している。

ホテルカクタスが取り壊されると決まった時、三人はどうするのか。それぞれ性格どおりの動きをする。ほのぼのとした中にも、人間の本来持っている優しい部分や、のんびりとした部分を浮かび上がらせようとしているような気がした。

金がほしいだとか、地位や名誉がほしいなんてのとはまったく無縁な生活。というか、何を求めているのかわからない。が、それでも幸せはすぐ近くにある。あくせく働き、競争に勝つことだけを目的に生活するのではない。ゆっくりと流れる時間の中での、ほのぼのとした生活には憧れてしまう。

ホテルカクタスの生活には、なんとなくだが憧れてしまう。




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