光  


 2012.11.8    光り輝く少年時代 【光】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

まるで少年時代に戻ったような気分にさせる物語だ。田舎の小学生たちが、様々な経験をする。そこにはちょっとしたミステリーがあり、嫉妬や嫉みや友情がある。貧富の差や、家庭の事情などを抜きにして、単純に友達として付き合える世代。楽しい子ども時代の思い出にひたるか、架空の物語として読むのか。感情移入できる人は、自分の子ども時代の思い出とリンクさせながら楽しめるだろう。去っていく友人に対する思いや、みなでたくらんだ悪事の数々。そして、大人と対決する恐怖。圧倒的な絶望あり、思いもよらない希望あり、奇跡としか言いようのない現象あり。子ども時代のワクワクとした冒険の現代版とでも言えばよいのだろうか。

■ストーリー

真っ赤に染まった小川の水。湖から魚がいなくなった本当の理由と、人魚伝説。洞窟の中、不意に襲いかかる怪異。ホタルを、大切な人にもう一度見せること。去っていく友人に、どうしても贈り物がしたかったこと。誰にも言っていない将来の夢と、決死の大冒険―。

■感想
子ども時代は、これほど自由で、危険で、楽しかったのだろうかと考えてしまう。少年たちが経験する出来事は、ちょっと不思議で、恐ろしく、むこう見ずで、危険だ。それらひとつひとつをとり上げると、不自然なように感じてしまうが、物語を通して考えると、子ども時代というのはこんな感じだったのかなぁと思わずにはいられない。冒頭の短編では、誰がワンダ(犬)を殺したのかという、ちょっとしたミステリー風味が強い作品となっている。このままのトーンで、少年が探偵となり事件を解決する流れかと思いきや…。

「女恋湖の人魚」は恐ろしさの中に、ほのぼのとした感覚がある。恐怖伝説のある湖に、肝試し感覚でのりこむ子どもたち。そこには…。子ども独特のワクワクした気分と、親や教師たちの抑圧から逃れたいという気分がない交ぜになる。その次の「ウィ・ワァ・アンモナイツ」もそうだが、なんだかわからない感動がある。友達のために危険を冒すことや、飼っていた亀のために、恐怖感を心に仕舞いこむなど、少年たちのいじらしい気持ちがにじみ出ているようだ。

「アンモナイツ・アゲイン」や「夢の入口と監禁」では、まさに冒険があだとなり危険な目に合う。この手の作品では、ある程度予定調和的に結末が予想できてしまう。ただ、危機から脱出するまでの過程としてどのような出来事が起こるのか。大人を小ばかにした態度あり、圧倒的力を持った大人に対してなすすべのない子どもあり。あらためて子ども時代というのは、周りは危険だらけでありながら、その危険に気付かずに生活しているのだなぁと思えてしまう。よく考えれば、自分も子ども時代に、今考えれば相当むちゃくちゃなことをやっていたことを思いだした。

ゲームでいうところの「ぼくのなつやすみ」的な感覚だ。




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