陽はまた昇る


 2013.5.28     モノ作りの情熱を思い出す 【陽はまた昇る】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
モノ作りにたずさわる社会人には、忘れかけた何かを思い出させてくれるような作品だ。VHSとベータの激しい規格争いというのは、微かに知っていた。後発であるVHSが逆転した要因などが、ドラマチックに描かれている。開発の苦労もさることながら、赤字部門でありながらひそかに開発を進める苦労がはっきりと描かれている。

そして、強烈なのは、開発が完了してから、販売にこぎつけるまでどれだけ大変かということだ。すでにベータが市場に出回っている段階で、どのようにしてVHSを売り出していくのか。インパクトがあるのは、VHSを売り出すために松下の本社へ直談判へいく場面だ。やはり人の情熱というのは、不可能を可能にする力がある。

■ストーリー

世界のフォーマットになったVHS-VTRの開発秘話や、ベータ=VHS戦争の裏側に迫った実話を基に全ての企業を実名で登場させ、ドキュメントタッチに描いた企業ドラマ。リストラによりビデオ事業部に異動させられた開発技師たちが一発逆転を夢見て奮闘する。

■感想
昔のモノづくりの状況というのが伝わってきた。いちおう、自分もモノづくりに関わっているので、感覚はよくわかる。開発が佳境に入ると、徹夜の連続で、それでもうまくいかない場合は、周りがピリピリしてくる。そんな状況であっても、完成したときの達成感というのは相当なものがある。

前半部分は赤字部門を復活させるための手段としてのリストラか、それとも新商品の開発かの葛藤が描かれている。全体を引っ張る人の情熱と覚悟によって、いくらでも変わりようがあると感じらる場面だ。

実話をもとにしているということで、心に響くものがある。特に、事業部長の独断でVHSを売りにだそうとするくだりは衝撃的だ。役人から規格をそろえろと言われ、それに対して反抗する。挙句の果てには、東京から松下の本社がある大阪へ夜通し車を走らせ、直談判に向かう。

普通のサラリーマンでは想像できないような無茶を繰り返しながら、最後にはすべてをやりとげてしまう。強引すぎる手法のようだが、ひとりの人物の情熱に感化され、周りがついていくというのがよくわかる状況だ。

ふと本作を見ながら思ったのは、今の自分の仕事にあてはめて考えてしまうということだ。自分はここまで仕事に情熱を注いでいるのか。ここまで必死になっているのだろうか。心のどこかでは、この程度でいいだろう、だとか、ここまで頑張らなくても、とストッパーをかけているような気がした。

おそらくかなり美化され、犠牲にした部分は最小限しか描かれていないだろう本作。仕事に心血を注ぎ、他のことはすべて犠牲にする覚悟がなければ成し遂げられない何か。そこまで熱くなるものは今のところ自分にはない。

モノづくりにたずさわる社会人に見てほしい作品だ。



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