2012.4.26 気分がウキウキする恋愛物語 【阪急電車】
評価:3
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■ヒトコト感想
阪急電車は良く知らない。ローカル線の駅についても良く分からない。それでも、ローカル線で巻き起こるちょっとした恋愛模様を読んでいると、気分がウキウキしてくる。石田衣良や江國香織のような大人の恋愛ではない。いい意味でお子ちゃまな恋愛だが、それが心地良い。図書館で見かけるあの人と、電車の中で偶然隣の席に座り、そこから話が弾んで恋愛へと発展するなんてことは、もてない男が妄想する典型かもしれない。リアルではないが、妄想をそのまま作品としたような雰囲気は潔い。駅ごとに発生するドラマは、必ずしも楽しいものだけではないが、前向きな気持ちになれるものばかりだ。失恋したり恋に臆病になった人は、読んでみると思わぬ効果があるかもしれない。
■ストーリー
隣に座った女性は、よく行く図書館で見かけるあの人だった…。片道わずか15分のローカル線で起きる小さな奇跡の数々。乗り合わせただけの乗客の人生が少しずつ交差し、やがて希望の物語が紡がれる。恋の始まり、別れの兆し、途中下車―人数分のドラマを乗せた電車はどこまでもは続かない線路を走っていく。
■感想
作者得意の雰囲気だ。体が痒くなるような、はずかしい恋愛。それをそのまま、惜しげもなく出しつくしたような感じだ。関西のローカル線で巻き起こる恋愛。地元であれば、駅前の描写などで共感でき、楽しめることだろう。阪急電車をまったく使ったことがなくても問題ない。電車の中で発生する出来事というのは、日本全国ほぼ共通だろう。電車の中で隣に座った綺麗なあの人と、いつのまにか付き合うことになる、なんてのは、男がよくいだく妄想だ。それをそのまま作品としてしまう作者はすごい。
幸せな恋愛ばかりではない。友達に婚約者をかすめとられた女や、DV彼氏から抜け出せない女など、なんとも心が苦しくなるような恋愛もある。ただ、それらも、最終的にはものすごく前向きな気持ちになり、新しい恋愛へ突き進むパワーとしている。恥ずかしいセリフがそのままでてきたり、思わず笑いがこみ上げるような言葉あり。知らず知らずのうちに、口元が緩み、ニヤニヤしてしまった。妄想を作品にするだけでなく、人の恋愛心をくすぐるような描き方がすばらしい。
恋愛ばかりでなく、大人や子供のドラマもある。ちょっとした教訓ものや、電車の中独特の雰囲気など、誰もが共感できる部分かもしれない。阪急電車というローカル線がテーマではあるが、そこには、ごく普通の人間ドラマがある。通勤通学で電車を使う人は、本作を読んだことで、電車内で人間観察をしてしまうかもしれない。もしかしたら、隣に座っている人が、自分に恋心をいだいているかもしれない。なんていうちょっと危険な妄想を現実に持ち込んでしまいそうになる作品だ。
恋愛がスタートする出会い方としては、本作の出会い方は最高かもしれない。
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