花のあと


 2013.3.25    凄腕だがおしとやか 【花のあと】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
武家の一人娘の”いと”は、女だてらに剣の腕がすばらしく、男に引けをとらない。そんないとが唯一歯が立たない相手に恋をするが…。女剣士の作品として、いとが剣一筋に生きるのではなく、武家の娘としての作法を守り、おしとやかな女性というのが良い。

男顔負けのガツガツした剣士ではなく、あくまでも女性としてのスタンスを守りつつ、剣の腕が立つという流れだ。女だてらに凄腕剣士となると、その結婚相手はどうなるのか、という疑問を本作は良い形で表現している。いとのいいなずけとして登場する男は、無駄飯ぐらいで大した取り柄のないダメ男風な印象を観衆に植え付けつつ、最後にしっかりと仕事をする。見事なストーリーだ。

■ストーリー

藤沢周平の短編時代小説を北川景子主演で映画化。藩の要職を務める名門・寺井家のひとり娘として生まれた以登。幼少の頃から父より剣の手ほどきを受けていた彼女が、武士の家に生まれた運命を受け入れながら凛として生きていく姿を描く。

■感想
武家に生まれ、凄腕の剣士だが女ということで、何かと制限を受ける。時代的な問題もあるのだが、いとが剣に心血を注ぐというのではなく、女としての生き方をしっかりと模索しているのが良い。弱い男を見下すでもなく、ただ、一歩下がり男をたてる。

女剣士としての描写というのは、実はあまり登場してこない。最初にいとがどれだけ強いかということが表現されているだけで、その後は、武家の娘としての生き方に重点をおいて描かれている。

いとの初恋の相手が、卑劣な罠にはまり自害することになる。このあたり、なんとなく先が予測できたが、いとのその後の行動は予測できない。そこで登場するのが、いとのいいなずけだ。最初はただの無駄飯ぐらいの役立たずのような印象ばかりが強く。いとはこんな男とは釣り合わないという流れになっていた。

それが、いとの悩みに気づき、人知れず調査する姿というのがなんともかっこよい。男は剣だけがすべてではない、という作中のメッセージが込められているようなキャラクターだ。

ラストはある程度予定調和的な終わり方だ。武家の一人娘として生まれ、剣の腕がどんなにすばらしくとも、女として生きなければならない。そんな状況と、男であっても剣だけに生きるのではなく、お役目をしっかり理解し、家を盛り立てる生き方もあるという、決まりきった生き方を否定するような描き方をしている。

その象徴がいとであり、そのいいなずけなのかもしれない。ひとり、武士として悩み苦しんだいとの初恋の人は、結末としてわかりやすい結果となっている。

いとのキャラクターが思っていたよりも女性らしいことに驚いた。



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