ハイ・クライムズ


 2011.11.16  サスペンスとしての強烈なドキドキ感 【ハイ・クライムズ】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
サスペンスとしての強烈な面白さがある。軍事裁判にかけられた夫の無実を証明するために、奔走する妻のクレア。秘密主義の軍による陰謀を疑わない流れのまま、クレアは軍事裁判のプロであるチャーリーと共に調査を続けていく。観衆は相手が軍であることで、軍の陰謀というのをイメージする。裁判で対決する相手は、強面でいかにも悪役な風貌をしている。そうなってくると、夫であるトムの無実を証明するためのクレアとチャーリーの破天荒な行動も、ワクワクしながら応援してしまう。サスペンスとして、そのまま勧善懲悪ではあまりにも面白くない。と思っていると、やはりしっかりとしたオチがある。サスペンスとしてのドキドキのタイミングの良さには、思わず唸ってしまう。

■ストーリー

美しく優秀な女性弁護士クレアと、建設会社を経営している夫トムは、カリフォルニアのマリン郡で幸せな生活を送っていた。しかし、ある日家に強盗が入り、警察沙汰になったことをきっかけに事態は思わぬ方向に進んでいく。強盗事件の後まもなく、トムは街でFBIに逮捕される。彼の本名はロナルド・チャップマン。かつて海兵隊の特殊部隊に所属していた彼は、エル・サルバドルで一般市民を9人殺害し、12年もの間逃亡していたというのだ。トムはクレアに身の潔白を訴え、無実を信ずるクレアは彼を救うべく、軍事裁判のプロであるチャーリー・グライムス弁護士の助けを借りて軍事法廷に立った。しかし、そこは彼女の知っているルールがまったく適用されない世界だった……。

■感想
定番としてのパターンがある。善良な市民が、巨大な権力を持つ組織にはめられ、ありもしない罪をでっち上げられ、裁判にかけられる。そこで有能な弁護士と、アウトローだが能力のある情報屋などを使い、巨大な組織に対抗する。結果、善良な市民は無実の証明ができ、巨大組織は歯噛みして悔しがるという図式だ。判官びいきなのだろう。巨大な権力に対して小さな力が勝つというのは、見ていて気持ちが良い。本作もそのパターンに当てはめることができる作品だ。巨大な組織は軍という、これ以上ないほど秘密主義がまかりとおる世界だ。

軍事裁判にかけられた夫を救う妻という、わかりやすい展開。いかにも悪巧みが似合いそうな軍の関係者たち。親玉である准将にいたっては、そのソフトな見た目が、腹黒さを増幅させるような効果すらある。すべて最初に作られた展開に当てはめて見てしまう。軍関係者たちは常に嘘の証言をし、権力には逆らえないと考えている。そうなってくると、クレアとチャーリーに危機がおとずれれば、すべては軍の暗躍だと思い込んでしまう。オーソドックスなパターンを連想させ、最後に別の結末をもってくる。まんまとやられてしまった。

作中にはたくみな伏線がある。それが嘘発見器のたぐいだ。このあたりから、かすかな疑問がわいてくるが、オーソドックスな流れに引き戻す強い力がある。憎たらしい証言者たちに、決定的な証言をした人物が突如として行方不明となる。となると、もはや軍の影響は疑わざるを得ないだろう。ラスト直前の怒涛の展開と、絶妙なタイミングで真実が明らかとなる。サスペンスとしての緊張感ははかりしれない。ある一定のパターンを逆手にとるうまい方式だ。

チャーリーとクレアのコンビが硬軟あわせもっており、良いコンビだ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp