エロスに古文はよく似合う  


 2012.7.29   これで古文が好きになる? 【エロスに古文はよく似合う】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

今昔物語に興味がある人にはたまらない作品だろう。逆に、まったく興味がない人は…。今昔物語の中で愛の話をさぐり、それを現代に置きかえる。作者独自の解釈もあり、エロスに関してのあくなき探究心というのが伝わってくる。古典であればこそ、にじみ出るエロスがある。古典をそのまま読むのは、普通の人には難しいだろう。それを作者が優しく翻訳してくれるので、理解しやすい。さらには、今昔物語をモチーフとした作品を、芥川龍之介が書いていたというのも知らなかった。有名な作品が、実は今昔物語をベースに描かれていたと知る人は少ないだろう。驚きもあるが、興味もわいてくる。芥川が好きな人には間違いなくお勧めだろう。楽しむためには、それなりの知識が必要なことも、この作品の特徴だろう。

■ストーリー

時は平安後期―貴族社会から武家社会へと移りゆくとき…。“今はむかし…”で始まる『今昔物語』、その中にも意外や意外ありました―愛の話―。「いやだわぁ」と言いながらも、愛に関しての好奇心は〈現在〉も〈昔〉もかわらないようで…。それでは、その不思議な世界へあなたも御一緒にどうぞ―。

■感想
今昔物語と聞いて何を思い出すだろうか。普通の人は歴史だとか、国語の授業を思い出すだけだろう。はっきりいえば、今昔物語の内容など知らない。興味がないと言った方が良いのかもしれない。そんな人には、もしかしたら読むのが辛いかもしれない。小難しい旧仮名つかいの文章を読むのは疲れる。意味のわからない言葉や、比喩などが登場し、情景がまったく思い浮かばない。そんな困難な古典を、作者がわかりやすく噛み砕き、さらにはオマケとしてエロスの要素に注力している。

はるか昔の平安時代であっても、エロスはかわらない。古文の中にはエロスの要素がたくさんつまっている。それを作者が拾い集め、現代風にアレンジし、さらには自分の経験をプラスした面白エッセイに作り上げている。今昔物語に興味があれば、楽しめることは間違いない。興味がなくても、芥川龍之介の作品を読んだことがある人には、また別の楽しみ方がある。芥川が今昔物語の中からモチーフを探していたというのは驚きだ。有名作品にも関わらず、ほとんど知らなかったので、本作を読むことで勉強になったのは確かだ。

エロスに関する好奇心は、今も昔も変わらない。そして、それを読むのが楽しいのは、今も昔もかわらない。作者の「ギリシャ神話を知っていますか」的なパターンは、そのベースとなるモノを多少知っていないと、ついていけない可能性がある。本作も、今昔物語を多少は知っていないと辛い。が、別パターンとして、本作を読むことで今昔物語に興味を持つ場合があるかもしれない。そうやって興味の幅が広がるというのは良いことだ。自分はそうはならなかったが、エロスをきっかけとして古文に興味をもつのは、そう悪いことではないだろう。

古文の授業に、エロスが加われば、もっと真剣に授業を聞いたかもしれない。




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