2012.3.26 いつの時代もエロは最強コンテンツだ 【江戸禁断らいぶらりぃ】
評価:2.5
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■ヒトコト感想
昭和40年代に出版された本作。30年以上前の作品ながら、面白さは変わらない。それは本作が江戸時代のエロ本やエロ文化についての作者の考察だからだ。江戸時代をテーマとするのであれば、たかが30年なんてのはほとんど意味がない。江戸時代にはこんなエロ本があったのかという、若干とまどいを含んだ感想をもつだろう。今の時代のように、ネット上で動画が見放題なんてことがないかわりに、文章による想像力をかきたてるエロさがある。ただ、どうしても頭の中で想像するのは、浮世絵風な春画ばかりなので、興奮することはない。エロに対する作者のコメントが、なんとも小粋な感じがして良い。決して品の良い作品ではないが、江戸文化の勉強にはなる。
■ストーリー
江戸時代は庶民文化の花ざかり。世界一短かいポルノグラフィである艶句、大胆な発想と緻密な文章技巧をこらした春本、人生の深奥を垣間みる小ばなし、いずれも江戸ならではの匂いにあふれる。それらの快作怪作をすくい上げ、人生観察の名手が縦横に品評、おもしろさを増幅させる? 江戸ポルノ書譜。
■感想
江戸時代のエロ本ときくと、どんなものを想像するだろうか。浮世絵風の春画が一番わかりやすいだろう。あの局部を異様に強調した気持ち悪い絵が、江戸時代のエロ本だと思っていた。本作を読むと、春画についてそれなりに語られているが、メインはエロをテーマとした川柳と小話だ。特に川柳はその短い文字数の中で、読み手にそうとうな想像力を求めている。昔の人は川柳を詠みながら、頭の中でその情景を想像し、興奮していたのだろうか。今では考えられないが、それしかなければ、そうするしかないのかもしれない。
エロと言っても単純なものではない。作者独自の調査?と解釈でさまざまな隠語の語源や、噂ばなしに解釈をくわえている。特に印象的なのは、日本だけでなく欧米でも昔からエロの部分は共通しており、なおかつ小話として面白おかしく描く部分も似ているということだ。江戸の文化的なものもあるのだろうが、間男に関する面白小話や、女中やめかけなど、今とは制度的に違った部分でのエロの面白さがある。時代が変われば、こうもエロに対するとらえ方が変わるのかという、驚きながら読める作品だ。
ほぼすべてがタイトルどおり禁断の書に関する話題となっている。決して人におおっぴらにお勧めできるような作品ではないが、江戸時代の文化に興味がある人にはうってつけの作品かもしれない。あとは、エロにあくなき探究心がある人は、現在のような即物的なものではなく、想像するエロというのを楽しめることだろう。現在よりもエロに対して締め付けが強い時代であっても、細かい隙間を見つけて娯楽として楽しむ人間のすさまじさを感じる作品でもある。
江戸時代好きの人におすすめだ。
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