ディア・ドクター


 2013.9.3     誰のための医療なのか 【ディア・ドクター】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
小さな村に唯一の医師として村人たちを助けていた伊野。へき地医療の大変さを描きつつ、そこにあるほのぼのとした医療現場を描いている。伊野の失踪から、もぐりの医者ではないか?とわかるまで。医者不足に悩む村の救世主的存在であった伊野が、またたくまに犯罪者扱いとなる。

医師の資格なしに医療行為を行い問題になるケースはたまにニュースで見るが、本当に村人たちのことを考えるならば、何が正しいかはおのずと答えは出てくる。村へ研修にやってきた研修医の存在が、また伊野の不可解さを増大させてはいるが、それでも伊野の医者としての実力に変化はない。伊野のキャラクターと周りの知ってか知らずかの伊野をサポートする行動が良い。

■ストーリー

山あいの小さな村。唯一の医師として人々から慕われていたひとりの医師が失踪した。警察がやってきて捜査が始まるが、驚いたことに村人は、自分たちが唯一の医者として慕ってきたその男について、はっきりした素性を何一つ知らなかった。やがて経歴はおろか出身地さえ曖昧なその医師、伊野の不可解な行動が浮かびあがってくる――。

■感想
もぐりの医者がなぜへき地医療へたずさわろうとしたのか。元医療器具営業の伊野が、医者と偽りへき地で村人たちを診療する。新たな研修医が研修にやってきたことで、ニセ医者だとバレないか気が気ではない。へき地医療というのは、常に問題になっている。

村にひとりも医者がいない状態というのは、異常かもしれない。へき地へ勤務してくれる医者というのは、村人たちにとっては神様かもしれない。そんな神様が実は…。皮肉なことに、たとえ医師免許がなくとも医療行為はできる。そして、村人たちに支持されているならば、なおさら医師免許は重要ではない。

誰のための医療行為なのか。それを考えると答えは出るのだが、この世はルールに縛られている。研修医が、自分の父親である本物の医師と伊野を比べ、伊野の素晴らしさを力説していたように、資格だけでは測れない何かがある。

伊野がもぐりの医師だとうすうす気づき始めた人も、伊野の貢献度を考えると、告発などできるはずもない。伊野がひそかに足りない知識を補おうと必死で勉強する姿というのは、見ていて微笑ましくもあり、悲しくもある。何が正しいのか、なんてことを考えるより、今そこにある現実を見るべきだろう。

伊野が失踪し警察から捜索されるシーンと、研修医が村へやってきたシーンが時系列に交互に描かれている。そのため、伊野がもぐりの医者であるという事実と、研修医の目から見た伊野の怪しさというのが、次第に一致していく。

強烈なインパクトはない。が、もぐりの医者が一番患者のことを考えて行動するなんてのは皮肉すぎる。へき地医療の問題を提起しているようでもあり、杓子定規の医療制度に問題提起しているようにも思えるが、単純に医者と患者たちとの心の交流の物語なのだろう。

伊野のキャラクターがなんとも言えず良い。



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