コーチ・カーター


 2012.10.16    最初に契約書ありき 【コーチ・カーター】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
おちこぼれの巣窟。荒れた高校の負け癖のついたバスケ部を立て直す新任のコーチ。負け犬たちを更正させるなんて物語はありきたりだ。青春物語として、もっともわかりやすい展開だろう。その過程がどうなのか、または競技的な特殊さなどで差別化を計りたいが…。本作のように、バスケで黒人たちが悪の道に入り込むなんてのは、ありきたりすぎる。しかし、そこでありきたりでない要素が、コーチ、カーターの存在だ。単純にトレーニングをきつくするだけではない。事前に契約書を交わし、すべて自分の言うとおりにさせるという縛りをつける。それに違反した者には…。ちょっとマンガ的かもしれないが、これがすべて実話ということで、説得力が増している。

■ストーリー

多くの生徒達が犯罪と隣り合わせに生きるカリフォルニアのリッチモンド高校に赴任してきたケン・カーターが、バスケットボールを通じて生徒達を立ち直らせようとする姿を描いた作品。

■感想
やる気のないバスケ部を更正させるために、カーターが最初に行ったのは、生徒たちに契約書にサインさせることだった。練習を工夫し、ダメバスケ部を強くするなんてのはよくあるパターンだ。本作でも、最初はひたすら走り、持久力を鍛えることから始まっている。その後、戦術練習を重ね強くなる。もちろんその過程では、コーチに反抗し、部を辞める者もいる。残った者たちで勝ち進むのだが、これだけでは単純なバスケ青春物語でしかない。本作が優れているのは、バスケのヒーローとなったはいいが、その後、鳴かず飛ばずで犯罪者へと成り下がる危機を伝えているということだ。

よくある単純な物語では、ワルたちが協力し勝てるはずのない強豪に奇跡的に勝利するなんて物語だ。その瞬間は人生のピークかもしれないが、その後、そのワルたちがどうなるかは描かれていない。本作のすごいのは、一時的にヒーローになって終わりではなく、その後の進学にも言及していることだ。確かにすべてコーチの言うとおりだが、契約どおり一定の成績を上げれなかった場合、練習を中止し、試合までも棄権するほど徹底したものだ。もちろん、保護者や地域の人々からは文句がでる。カーターはそんな外部の圧力に対してどのような決断を下すのか…。

本作が実話ベースということに、面白さが集約されている。ワルたちがたとえ一時的にせよ、勉強したからといって、そう簡単に更正できるはずがない。それが、ラストの展開を見ると、まさに実話ならではの流れとなる。強豪高に奇跡的に勝つなんてことはない。負けるときは負ける。しかし、そこで終わりではなく、人生はまだ続いていく。単純な青春バスケ物語ではない。先を見越したコーチのすばらしさというのが伝わってくる物語だ。短期的な結果だけを求め、その後のことは知らない、なんてことはない。最後までしっかりと面倒をみてこそ、コーチなのだろう。

青春物語としての面白さが凝縮された作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp