武士の家計簿


 2013.3.11    見栄や対面だけが武士ではない 【武士の家計簿】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
「武士は食わねど高楊枝」ということわざがある。武士は貧しくとも貧しさを表にださず生きるべきという意味だ。武士は体面を重んじる。どんなに金がなくとも見栄をはる。江戸から明治への転換期を生きる武士をとおして、親子3代にわたり清貧を貫き家を守る話が描かれている。元服や結婚式などのイベントで見栄をはり金を使うのは今も同じだろう。どんなに金がなくとも、晴れの舞台では借金してでも見栄をはる。そんな武士の家計が、気が付けばとんでもなく借金がかさんでおり、家の存続が危ぶまれる。そんなとき、ある一人の男が家を建て直すため、大胆な考えを実行にうつす。堺雅人の神経質そうな表情が、本作のキャラにマッチしている。

■ストーリー

幕末から明治。激動の時代を智恵と愛で生き抜いたある家族がいた-代々加賀藩の御算用者(経理係)である下級武士の猪山直之(堺雅人)は、稼業のそろばんの腕を磨き出世する。しかし、親戚つき合い,養育費、冠婚葬祭と、武士の慣習で出世のたびに出費が増え、いつしか家計は火の車。一家の窮地に直之は、”家計立て直し”を宣言。家財を売り払い、妻のお駒に支えられつつ、家族一丸となって倹約生活を実行していく。見栄や世間体を捨てても直之が守りたかったもの、そしてわが子に伝えようとした思いとは-。世間体や時流に惑わされることなく、つつましくも堅実に生きた猪山三世代にわたる親子の絆と家族愛を描いた物語。

■感想
武士の家計はなにより体面を重んじる。金がなくとも見栄をはる。前半は、算用者という、今でいう経理のような役割を代々担っていた家庭の話から始まる。ひたすらそろばんをはじき、一日中計算を続ける。そんな中で、直之は天才的なそろばんの才能はあるが、融通のきかない性格から、上が意図的に隠してきた不正を見つけ出してしまう。堺雅人演じる直之の、自分の信念を貫く姿はかっこいい。にやけた表情ではあるが、冷たさのようなものすら感じてしまう。淡々とそろばんをはじく表情が、キャラの特殊さをより一層引き立たせている。

直之が一人前に稼げるようになると家計が気になり始める。そこであらためて家計の状況を調べた直之は、とんでもない状況に驚いてしまう。借金まみれで、いつ御取り潰しになってもおかしくない状況だった。家を建て直すために直之がうった大胆な計画。なにより体面を重んじる武士が、家財を売りに出すという、とんでもない行動にでる。直之の徹底した行動というのは、ある種異常で、妻や息子が嘆く理由にもうなずいてしまう。ただ、それらはすべて家を建て直すため。徹底した家計の管理を貫く信念というのは、最初とまったく変わっていない。

父親の葬式であっても、すぐさま費用を計算する直之。他人からすると、血も涙もない金の亡者のように見える場面だが、そこには直之なりの信念がある。息子に対しても、「それはやりすぎでは?」と思う場面がある。ただ、それら直之の行動すべてが、のちに息子が語る思い出より、すべては間違っていなかったと思えてくる。他人がどう思おうとも、身内が支持するのならば、間違いはない。世間一般の武士とは違う、貧しい武士の生活というのがひしひしと伝わってきた。

題材は地味だが、内容は非常に新しく感じてしまう。



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