2013.8.12 仕掛けに気づくまでが肝だ 【ボーダー】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
ベテラン俳優二人が、ベテラン刑事コンビとして登場する。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ。どちらも癖のある役者だけに、何か仕掛けがあるというのは最初から気づいていた。本作は、ベテラン刑事コンビが連続殺人犯を追いかけるというストーリーだが、実は犯人は刑事だったという流れだ。
殺す相手は逮捕を逃れてきた悪人ばかり。ベテラン刑事コンビは、ベテランらしい推理を展開するのだが…。冒頭からタークがまるで連続殺人犯のような告白をする。それも、監視カメラの映像での告白だ。精神に異常があるような数々の描写。そして、いかにも異常を隠している風なロバート・デ・ニーロの演技。ここまでくると、逆に犯人は別にいると想像してしまう。
■ストーリー
20年以上、コンビを組んできた、N.Y市警のベテラン刑事、ターク(ロバート・デ・ニーロ)とルースター(アル・パチーノ)は、共に社会の闇に潜む犯罪者を捕らえてきた。お互いの全てを知り尽くしたパートナーとして固い絆で結ばれていた2人。ある日、連続殺人事件が発生。そして捜査をしていくうちに、全ての証拠がタークの犯行を示していた・・・。汚名を晴らすため、捜査にのめり込む2人。しかし、その先には彼らの運命を大きく変える驚愕の真実が待ち受けていたー。
■感想
タークがカメラ越しに告白する。どんな理由で殺人を続けてきたのか。これは最後に種明かしがあるのだが、物語のトーンは、タークが連続殺人犯だという流れで進む。ベテラン刑事の二人が、手柄を立てるが、それ以上に手痛い失敗もする。
刑事という職業に誇りを持ちつつ、悪をこの世から抹殺しようとする。刑事の顔と、悪に対する強烈な怒りという二つの顔を持つ二人。どうしてもタークは直情型で、ルースターが冷静にタークを抑えるという役柄が出来上がってしまう。となると、タークが犯人ではない場合は…。必然的に答えは出てしまう。
仕掛けは面白い。合間にタークが淡々とカメラ越しに語るシーンが、どのようなシチュエーションなのか、最後まで気になって仕方がない。タークが逮捕されたのか、それとも…。タークの怪しさに気づいた同僚刑事たちがタークを調べ始める。このあたり、もうタークが犯人しかありえないような状況となる。
ただ、唯一生き残ったロシア人が、誰が犯人かを告白する場面では、もう決定的だ。観衆に誰が犯人かをわからないようなカメラワークなのだが、バレバレだ。この手の仕掛けは、犯人がバレてしまうと、途端に色あせてしまう。
ふたりの演技はすばらしい。特にラストのタークのなんとも言えない表情というのは、ロバート・デ・ニーロらしい。長年連れ添った仲間。そして、自分が疑われていたということ。最後に犯人の始末を自分でつけたこと。死体の近くに詩が落ちているなど、なんとなく「セブン」に近い雰囲気を感じた。が、ラストの驚きはセブンには及ばない。
全体的にどんよりとした画面。画質の粗い監視カメラの映像。淡々と語るターク。精神に異常をきたした男としての表現としては、これほどぴったりくる表現はないだろう。
仕掛けに気づくまでは楽しめる。
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