2011.9.22 時代をこえる少女 【ブルースカイ】
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■ヒトコト感想
最初は中世ヨーロッパの物語かと思った。それが物語りがすすむにつれ、未来、そして現在へと舞台がうつっていく。3つの時代が関連しており、奇妙なSFであることは間違いない。印象としては、最初の中世ヨーロッパの物語が印象的で、その他の時代の描写であっても、どこかで中世ヨーロッパと繋がっているのではないかと思えてしまう。非常にマニアックで、深読みできる部分もある。絶滅した”少女”という時代と、男が成長しない未来。現代の世相を反映させ、未来を予言しているようにも思えるが、物語の激しい起伏についていくのはかなり大変だ。結局のところ、この3つの時代のどこを一番言いたいのか、そのあたりがよくわからなかった。
■ストーリー
西暦1627年、ドイツ。魔女狩りの足音が忍び寄るレンスの町で、10歳の少女マリーは“アンチ・キリスト”に出会う。西暦2022年、シンガポール。大人になれない3Dアーティストの青年ディッキーの前に、絶滅したはずの“17歳の少女”というクリーチャーが現れる。そして、西暦2007年4月の日本。火山灰が舞い散り、桜が咲き狂う鹿児島で、あたしは―ひとりの少女と世界とのつながりを描く
■感想
過去、現在、未来と時代がうつりかわり、物語は激しい変化にのみこまれていく。中世ヨーロッパの魔女狩りの時代から、何か近未来的な謎があることを匂わせており、読者の興味をひきつけている。それが、次のパートへすすむと舞台は未来となり、仮想現実の世界と成長しない男たちの物語となる。中世ヨーロッパの世界観がすばらしいので、そこをメインにすすんでいくのかと思いきや、次の時代へとうつっていく。未来の世界での、変わっていく男女関係というのはインパクトがあるが、中世ヨーロッパの世界とあまりにかけ離れているので、頭を切り替えるのが大変だ。
未来の仮想現実の世界から、現在へとうつりかわる。そこでは17歳の少女が主役となるのだが、このあたりは作者の得意な、世間に対して不満をもつ少女が描かれている。結局のところ、この少女をとおして3つの世界は繋がっているのだが、壮大なSFであることは間違いないが、細かな理由がいっさい説明されていない。時代を超える少女というのは、なんだかすごく魅力的に思えるが、どうやってその少女が自分の状態を理解したのかだとか、少女を追いかける人物のことをどうやって知ったのかなど、消化不良な問題は放置されたままだ。
少女が様々な時代に飛ばされるだとか、中世ヨーロッパであっても、すべてを知っているような人物がいたりと、気になる謎は多数ある。それらについて、読み終わるとしっかり解消されるかというと、そうではない。時代を飛び越える壮大なSFなので、何かと細かい不都合が生じたり、時間を越える理由や、システムについて説明がされないと、どうにも納得できないままモヤモヤした気持ちになってしまう。先が気になる流れであることには間違いないが、その気になる先は、突然道路が切れて崖になっているような感じだ。
設定は面白いので、ぶつ切りにならずに壮大な構想のすべてを読んでみたかった。
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