びっくり館の殺人 綾辻行人


2011.9.27  館シリーズというブランドありき 【びっくり館の殺人】

                     
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■ヒトコト感想

館シリーズの最新作。シリーズを読んでいればより楽しめるのはいつもどおり。ただ、今回はいつもの大どんでん返しを期待すると、納得できないかもしれない。恐ろしげな雰囲気はただよっており、館としての仕掛けも面白い。びっくり感という名前の由来と、そこで生活する人の奇妙さに気をとられ、肝心のトリックの部分はこじんまりとしたものになっている。館と密室はきってもきれない関係なのだろうか。前作暗黒館に比べるとページ数の少なさからも、コンパクトなのはわかっていた。結末ちかくまで読み進めていると、もうひと捻りあるのではないかと思えるほどシンプルだ。館シリーズの登場人物はおまけ的に登場し、名前などでもファンを楽しませようとしている。

■ストーリー

三知也が小学校6年生のとき、近所に「びっくり館」と呼ばれる屋敷があった。いろいろなあやしいうわさがささやかれるその屋敷には、白髪の老主人と内気な少年トシオ、それからちょっと風変わりな人形リリカがいた。クリスマスの夜、「びっくり館」に招待された三知也たちは、<リリカの部屋>で発生した奇怪な密室殺人の第一発見者に! あれから10年以上がすぎた今もなお、事件の犯人はつかまっていないというのだが……!?

■感想
館シリーズというブランドがあるからこそ、成立する物語なのだろう。密室殺人としての不可解さというよりも、そこで生活する者たちの奇妙さ。物語の核となるトリックが特別新しいだとか、驚かされるといった類ではない。頭の中で想像したとたん、異常な状況に恐ろしくなる。館シリーズの中では、本作に限り映像化しても恐ろしさやトリックは成立するのではないだろうか。館シリーズ独特のだまされたという心地よい驚きは少ないのだが、ジワジワと染み入る恐ろしさはある。

少年と少女が主役というのは、今までの館シリーズにはなかったものだ。そのため、大人では当たり前にでてくるアリバイ関連の話や、動機についての話など、ミステリーの定番的な流れはない。その影響なのか、刑事との絡みもなく、密室殺人についても、あっさりとした表向きの答えが示されている。警察は誤った情報を発表し、裏では主人公たちだけが知る別の真実がある。あまりにあっさりとした事件に対する警察の捜査に、物語全体の重厚さというのが薄れてしまうような気がした。

暗黒館の雰囲気と本作があまりにかけ離れているので、館シリーズの外伝的位置づけかと思いきや、正統なシリーズらしい。館シリーズとなると、それなりにハードルは高くなり、求めるレベルも高まるのだろう。前作がかなり長大な作品だっただけに、本作はあえて短くしたのだろうか。シリーズとしてトリックに重点を置くのではなく、恐ろしさにのみ力を注いでいるようにも感jられた。特に、読者にその映像をイメージさせ、ありえないような恐怖感をあおっている。

トリックメインではないことは確かだ。



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