2013.4.13 原作マンガが恐ろしすぎる 【阿刀田高のサミング・アップ】
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■ヒトコト感想
作者の様々な雑文を収録し、原作とドラマの脚本の比較や、講演会の内容などもあり、盛りだくさんだ。冒頭で様々な都市に対する作者の思いがつづられている。シンプルな感想のため、その都市についての印象がよくわかる。
アマチュア時代のコラムは、まさに作者の原点を見るようで面白い。作者のブラックユーモアは、すでにアマチュアのころから出来上がっていたということがよくわかる。そのほかには、素人が書いた短編小説の添削のようなことまでしている。素人とプロではその差が歴然なのは当然として、素人のネタでプロが作品を書くというのが、許されるのだろうか。本作には小説作品だけではなく、様々な作品が収録されているので、阿刀田高ファンならば、読んでおくべき作品だ。
■ストーリー
幻想、怪奇、推理、官能、ユーモア…。12色の小説を書きわける都会派作家・阿刀田高が、いま初めて自らの手で、代表作を挙げてその小説作法をさらけだす。さらに劇画、シナリオ、未収録のエッセイ、講演記録で阿刀田文学の魅力を立体的に浮きぼりにする。
■感想
作者の作品が原作となったテレビドラマの脚本は、あまり印象にない。小説と脚本は当然違うものとして存在し、その比較としての面白さを表現しようとしているのだが…。小説がこんな風に変わるのだ、という驚きはあるにせよ、それ以上のものではない。
それに比べると、アマチュア時代のコラムというのは衝撃的だ。すでにアマチュア時代からブラックユーモア全開で、思わずニヤリとするような作品を描いていたのだとわかる。プロになっても、その根本部分は変わらないので、昔からつちかわれた技術なのだと感じることができた。
衝撃的なのは、作者の作品を原作としたマンガだ。劇画チックなマンガであるがゆえに、すさまじい恐怖感がある。初期の名作である「あやかしの樹」を原作としたマンガなのだが、絵とマッチした雰囲気がすばらしい。
小説では、頭の中で思い浮かべるしかなかった情景が、そのまま絵として表現されると、恐怖感は倍増する。美女の死体を養分として成長する木。その木が成長し、男と交わる姿というのが、なんとも気持ち悪い。この絵だからこそ表現できた雰囲気だろう。
その他には、作者の講演会が文章としておこされている。捕鯨が許された時代、海外で捕鯨禁止を決める会議での話がメインだ。この講演会の話を読むと、作者は小説家としての才能だけでなく、話し手としてもかなり実力があるというのがわかる。
何百人も前にして理路整然と話などできるはずがない。あらかじめ話す内容を決めていたとしても、原稿でもない限りは、スラスラと話すのはむずかしいだろう。作者の魅力を立体的に表現するという内容に間違いはない。
作者のファンならば、はずせない作品かもしれない。
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