暗黒館の殺人4 綾辻行人


2011.8.19  館シリーズの総決算 【暗黒館の殺人4】

                     
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■ヒトコト感想

すべての謎は本作で解明されるのだが…、このオチをどう思うのか。叙述トリックと言われればそうかもしれないが、どうなのだろうか。ただ、オチがどうあれ、館シリーズの総決算としての役割ははたしている。すべての原点と言うべき作品であり、他の館シリーズを読んでいないと楽しみは半減するだろう。長大な物語のラストとして、今までの謎や、館シリーズのルーツがたどれるようで感慨深い。オチがどうあれ、今後続くであろう館シリーズに深みが増したのは確かだ。本作自体は解決編ということで、驚きの連続であるのは間違いない。江南と中也が重要な役割をはたしていたことも予想通りだ。館シリーズの積み重ねと、雰囲気によってミステリーとしての面白さが増幅されている。

■ストーリー

血塗られた浦登家の系譜を受け継ぐ者は誰?漆黒の館を包み込むのは断罪の炎か。逆転に次ぐ逆転の果て、とうとう事件の真相は明らかになったかに見えたが…。

■感想
1巻を読んでいるとき、ふと感じたことがあった。それは最初の江南の時代と、メインで語られている時代に、ズレがあるのではないか?とういことだった。どの部分でそう思ったのかわからないが、物語はそのまま進むので、気のせいということで、すっかりそのことを忘れていた。それが、4巻となりまさかのオチを読み、自分の予感が正しかったのだと思った。ということは、1巻の時点ではっきりとは名言しないまでも、サブリミナル的な何かヒントがあったのだろう。

長大な物語のラストとして、壮大なトリックというわけではないが、確かに大きなどんでん返しだ。館シリーズの総決算として、すべての原点といえるかもしれない。不死を呼び込む謎の肉の話や、館シリーズではおなじみの中村青司についてなど、館シリーズをまだまだ続けさせるための材料まで用意されている。3巻までで積み重ねられたミステリー的な秘密として、そのページ数にしては弱い。直接事件の解決に関することも、ありきたりな印象しかない。正直、本作の事件はどうでも良いのかもしれない。最初からオチを利用し、館シリーズの原点を表現したかっただけなのだろう。

非常に長い物語なので、結末が近づくと、達成感とともに変な寂しさがある。「ああ、これでこの物語は終わるのか」という、まるで小学校の卒業式で仲の良いクラスメイトと離れ離れになるような感覚だ。それほど物語にはまりこみ、感情移入していたのだろう。トリックがどうあれ、これだけ長い物語をある一定のテンションを保ちながら進めていくのは容易ではない。沢山の事件を詰め込んでの長さではなく、わりとシンプルなストーリーにもかかわらず、この長さだ。飽きる人はすぐに飽きるだろうが、館シリーズのファンならば確実に最後まで楽しめることだろう。

オチがどうなのかより、館シリーズの総決算として読む価値はある。



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