暗黒館の殺人2 綾辻行人


2011.7.25  謎の肉の秘密がうっすらと… 【暗黒館の殺人2】

                     
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■ヒトコト感想

怪しげな儀式の答えは本作でも明かされないままだ。ただ、その儀式の意味はおぼろげながら想像できる。ミステリー的な事件が発生し、作者お得意の密室や、屋敷に存在する抜け道のたぐいもいつもどおりだ。物語のカギとなる儀式や謎の肉、そして、屋敷の人々が言葉にしない真実などは、今までの伏線からある程度想像できる。いつそれらを明らかにしてくれるのか。もどかしい気持ちのまま読み進めることになる。記憶をなくした江南が、後半から重要になるのだろうが、今のところ視点役である中也ですら、なんだか怪しげな秘密がありそうだ。謎をてんこ盛りにし、それらについていっさい明かさない。モヤモヤと気になる部分が残ったまま、後半へと突入する。ここで止めるのは無理な話だ。

■ストーリー

食したまえ、この肉を…浦登家の面面が唱和する。〈ダリアの宴〉に参加した中也の身には何が?激しい嵐で外界と途絶された中で、ついに勃発する不可解な連続殺人。その被害者は?その犯人は?その動機とは?…謎は複雑怪奇に絡み合い、暗黒館の闇とともに、ひたすら深まりゆく。

■感想
1巻で最もインパクトがあったなぞの儀式の答えはここでも示されない。ミステリー的な要素があり、ちょっとした殺人事件も起きるが、物語の核となるものではないのだろう。物語はまちがいなく、儀式で登場した肉と、屋敷で生活する人々の死生観なのだろう。人魚伝説を1巻で少しだけ触れたのを考えると、人魚の肉のたぐいの話だとは思うが、はっきりとは示されない。そのほかにも、秘密があると打ち明けながらも、その秘密について話さない、寸止め状態が多い。いつのまにか、作中の中也と同じように、謎にばかり興味が集中してしまう。

セムシ男や、精神を病んだ人物が犠牲となり、物語はいつもの館シリーズっぽくなる。当然、外部との連絡は絶たれ、情報源であるテレビも映らない。こうなると、誰かがその状況を作り上げたのだろうかと想像してしまう。おそらく、事件のすべてを裏であやつる者が存在し、それは怪しげな儀式と肉に深い関わりがあるのだろう。ただ、こう予想したところで、作者は最後の最後に、あっと驚く仕掛けを用意しているのだろう。その伏線としては、中也の記憶が定まらず存在が微妙なことと、江南が記憶と声をなくしているということだ。この二人が後半に何か大きなカギとなることは間違いない。

本作で前半は終わり、事件を解決する探偵役以外はすべての登場人物たちがそろったことになる。後半では、それらの人物たちに次々と災難が訪れることだろう。館シリーズは当たり前のミステリーではなく、特別な何かを隠し持っているはずだ。大きな期待をもちつつ、1,2巻で登場した謎をあますことなく解決してくれるのかという不安もある。長さ的にも館シリーズの総決算といっていいのだろう。シャム双生児や、早老症の子供など、作者らしいキャラもあり、ワクワク感は際限なく心の奥底からわきだしてくる。

長大な物語の解決へ近づくまでが、一番重要なのだろう。



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