雨はコーラがのめない 江國香織


2012.7.3   犬が飼いたくなる 【雨はコーラがのめない】

                     
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■ヒトコト感想

作者が飼っている犬と好きな音楽のエッセイ。アメリカン・コッカスパニエルに雨という名前をつけるあたり、作者らしい。作者ができ愛する雨。雨と一緒に聞く音楽をエッセイで表現している。正直、音楽のエッセイについてはあまり印象がない。世代と趣味が違うので、エッセイ中で語られる音楽についてはほとんどわからない。それでも、雨との日々の生活を読んでいると、心が温かくなる。雨と愉しそうに毎日暮らしているエッセイを読まされると、つい、犬でも飼ってみようかな、と思ってしまう。わがままで甘えんぼうで自由な雨。それを無条件に受け入れ、可愛がる作者の幸せエッセイだ。犬好きならば、必ず楽しめ、読みながら表情が緩んでしまうだろう。

■ストーリー

はじめて雨に会った日のことは、忘れられない。凍えそうに寒い、十二月の、雨の日だった。濃い栗色の巻き毛をした雨は、オスのアメリカン・コッカスパニエル。私たちは、よく一緒に音楽を聴いて、二人だけのみちたりた時間を過ごす。もちろん、散歩にも行くし、玩具で遊んだりもするけど。甘えたがりの愛犬との特別な日常や、過去の記憶を呼び覚ます音楽について、冴え冴えと綴った好エッセイ集。

■感想
犬の雨と戯れながら、音楽を聴き、それをエッセイにする。音楽エッセイだが、音楽の部分はほとんど興味が無い。知識がないと言った方がいいかもしれない。主に洋楽と古いJPOPなので、ついていけない。アーティストの名前は聞いたことはあるが、曲名が登場しても、その曲をイメージできない。そのため、気分によって流す曲を変えている作者だが、曲と気分の一致状態がよくわからない。作者と音楽の趣味が近い人には、曲と気分がしっかりとリンクできて楽しめるのかもしれない。

音楽以外は、十分伝わってきた。雨と作者の楽しい生活。犬と一緒に音楽を聴くなんてシーンは想像しただけで楽しくなる。犬がそれほどおとなしく曲を聴いているとは思えないが、雨はそうなのだろう。犬は言うことをきかない子供のようなイメージがあったが、本作の雨は、とても利口でコミュニケーションがとれているからこそ、楽しく感じるのだろう。作者が雨の気持ちを代弁し、セリフとして作中に描いているが、それがかなり秀逸だ。作者との会話の応酬が、本当に雨がそうしゃべっているように感じてしまう。

本作を読むとペットを飼いたくなる。それも、室内犬だ。大好きなおもちゃがあり、散歩やペットホテルに泊まることを全て理解し、行動する雨。雨と作者が遊ぶシーンや、久しぶりに家に帰る場面などは、無意味に感動してしまう。犬との生活というのは、いろいろとわずらわしい部分もあるはずだが、作者はそれをわずらわしさと感じていない。本作を読むと、犬の良い部分ばかりが目に付くが、真実はいろいろとあるのだろう。それをわかっているにもかかわらず、犬を飼いたくなる。そんなエッセイ集だ。

一人暮らしの人が読むと、衝動的に犬が飼いたくなるだろう。



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