赤朽葉家の伝説 桜庭一樹


2011.12.17  女たちのすさまじい人生 【赤朽葉家の伝説】

                     
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■ヒトコト感想

旧家に生きる女たちの三代記。万葉に毛鞠に瞳子、この女たちは確かに強烈だが、その周りの人びとの個性や時代の変遷が物語を面白くしている。赤朽葉家という、製鉄業で財をなした家に奇妙な千里眼をもつ万葉が嫁入りしてから物語は始まる。万葉の孫たる瞳子の語りで始まる物語。未来が見える万葉の周りで巻き起こる事件や、時代によって業態を変えていく赤朽葉家の変化。女たちの衝撃的な人生は、読み応えあるが、周りの個性豊かな登場人物たちの存在によって、面白さが倍増している。壮大な物語であり、現実感はない。が、赤朽葉家の奇妙な家族たちの話には、自然と引き込まれてしまう。個性的な名前も、キャラクターに特別な印象を植え付けている。

■ストーリー

“辺境の人”に置き忘れられた幼子。この子は村の若夫婦に引き取られ、長じて製鉄業で財を成した旧家赤朽葉家に望まれ輿入れし、赤朽葉家の“千里眼奥様”と呼ばれることになる。これが、わたしの祖母である赤朽葉万葉だ。―千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く一族の姿を鮮やかに描き上げた稀代の雄編。

■感想
物語すべての根本は、万葉の存在にある。千里眼であらゆる人の未来が見えてしまう。そんな万葉を主人公に第一部は進んでいくのだが、周りのキャラのインパクトがすさまじい。玉の輿で赤朽葉家へ嫁いだ万葉の周りで起こる奇妙な出来事。製鉄業の変化や、生まれてくる子どもたちまで、この独特な個性というのは衝撃的だ。時代がうつり変わっても、赤朽葉家という巨大な家に住む万葉の目から見た世界というのは、あまり変化がない。万葉という特殊な存在が、物語を一筋縄ではいかないピリリとした刺激を常に与えている。

万葉の娘である毛鞠が第二部の主役となる。手のつけられない不良娘が、ひょんなことから売れっ子少女マンガ家となる。ここでも、毛鞠の奇想天外な行動や、周りにいる特殊なキャラクターたちに圧倒されてしまう。不良少女の頂点へと上りつめたかと思うと、まったく畑違いなことをやってしまう。赤朽葉家という呪縛からもっとも離れた場所にいるような存在だ。そのかわり、兄弟たちが赤朽葉家らしく、普通ではない性格をもっていたりもする。正直、この家族はどうなのかと思うが、よくわからない説得力があるのは確かだ。

最後には毛鞠の娘である瞳子の物語となる。基本的に母親と祖母の思い出になるのだが、瞳子も一筋縄ではいかない。万葉や毛鞠に比べると、インパクトがないようだが、赤朽葉家すべての秘密を探るような、そんな行動をとりはじめる。現代に近づくにつれて、赤朽葉家独特の色というのは薄まってくる。製鉄業が業態を変え、赤朽葉家自体も衰退の一途をたどる。壮大な物語をしめくくるのにふさわしい、強烈なまとめの物語となっている。女たちの激動の人生。周りの個性的なキャラクターの魅力によって、女たちの魅力が倍増している。

普通の人では考えつかないような物語だ。



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