2011.7.12 定年を迎えた男の哀愁 【アバウト・シュミット】 HOME
評価:3
■ヒトコト感想
定年退職した男が今までと激変した生活に戸惑いつつ、新しい生活を妻とすごそうとした矢先、妻が急死する。基本的にチャリティとしてアフリカの少年へ送る手紙形式でグチを書きつづる。このグチが一通り面白く、そしてシュミットの境遇が変わっていくのが面白い。妻に先立たれた男が直面する問題と、行き遅れ寸前の娘が選んだ結婚相手への不満などがユーモア満天に描かれている。特に娘の結婚相手家族のとんでもないはちゃめちゃっぷりが楽しい。シュミットはそれらに混乱しつつも、定年を迎え、後は死を待つだけの状態になり、人生を考えてしまう。ホロリとする部分や、思わずニヤリと笑える部分もある。シュミットの憎めないキャラと、最後の感動シーンですべてが許せてしまう。
■ストーリー
保険会社を定年退職したシュミットは、ひまな毎日に嫌気がさし、チャリティ団体に応募。援助するアフリカの少年に手紙を書く。ところが簡単な自己紹介のつもりが、妻への不満など、グチばかりつづることに。そんなとき妻が急死。愛娘が帰郷するが、彼女が連れてきた婚約者はとんでもないアホだった…。
■感想
エリート保険マンだった男が定年し、妻に先立たれ、一人キャンピングカーで旅をする。ここだけ読むと、なんだか優雅で今までの人生を振り返る意味のある旅のように感じるが、実状は暇すぎてやることがない。娘の結婚式の準備を手伝おうとしたが、娘から断られ、暇をもてあまし旅をしていただけだ。定年という、人生の中ではかなりの一大イベントを終え、そこから第二の人生をどのようにして楽しむのか。日本の仕事人間のお父さん世代は、本作のシュミットのようになりかねないだろう。思わず自分の将来を考えてしまう。
行き遅れ寸前の娘が選んだ結婚相手が、微妙で苦しむ部分が面白い。親は親なりに考えることと、娘の考えの違いや、相手の家族との関係など、シュミットの困惑する姿が見所だ。カルチャーショックに近い衝撃をうけ、そこからどのように立ち直るのか。今までとはまったく違う環境の中で、会社を定年し、ただの親父になった男が、どのような行動をとるのか。考え方の違いや、人生における自分の立ち位置など、定年を迎えた男が考えるべき要素がたっぷりとユーモアを交えながら詰まっている。
チャリティー団体を通じてアフリカの少年へ手紙を送る。これが感動を引き起こす鍵となっている。人生とはどういった意味があるのか。定年退職した男が人生の意味を考え、少年の手紙でそれを悟る。大きなイベントが続くと、人は燃え尽きたように抜け殻になりがちだ。シュミットが思う晩年の人生と、あまりに違いすぎる現実に悲観するのではなく、アフリカの少年がくれた手紙により、人生の意味を考えなおす。ユーモア溢れる楽しい物語が、ここへきて一気に感動を呼び起こす。ラストのシーンは映像でしか表現できない感動シーンだ。
定年を迎えた男が直面する問題は、どの国でも同じなのだろう。
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