GOSICK3  


 2012.2.8  ツンデレ劇場炸裂 【GOSICK3】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

シリーズ3作目。今回もミステリアスな事件と共に、ヴィクトリカの秘密が少しだけ明らかとなる。巨大高級デパートに消える子どもたち。その謎を解くのは、いつものとおりヴィクトリカだが、今回は風邪を引いたということで、電話での参加となる。相変わらずわかりやすいツンデレで、回を重ねるごとにパワーアップしている。ミステリー的な謎は特別驚くようなことではない。このシリーズの定番として、久城がヴィクトリカとなんだかんだ喧嘩をしながら、最後には解決するという王道パターンを踏襲しているので、安心できる流れだが、新鮮味はない。ヴィクトリカの兄の風変わりな髪型の秘密や、妹を恐れる理由など、今まで”なぜ?”と思っていた部分がだんだんとわかってくるのは心地良い。

■ストーリー

“青い薔薇”を買ってきてちょうだい―故郷にいる姉の頼みで、首都ソヴレムに出かけてきた一弥は、巨大高級デパート“ジャンタン”で、不気味な体験をした。街に流れる“人間消失”の噂、異様な計算能力を持つストリートチルドレン―深まる一方の謎を抱え、一弥は風邪で寝込んでいるヴィクトリカに電話をする。“知恵の泉”は距離の壁を超え、難事件を解決できるのか…!?

■感想
デパートの中で消える子どもたちの事件を調査しつつ、その過程で登場する謎の人物に重要な意味があるのだろう。いかにもヴィクトリカと関係があるような記述の仕方をし、それでいて、事件には関わらず、すぐにどこかへ消えてしまう。ヴィクトリカには大きな秘密があるのは想像できる。ただ、そこに関わる人物たちにもあらゆる伏線が用意されているようだ。シリーズの先をみこしてのことなのだろうが、この手の手法はシリーズを途中でやめることができなくなる。ちょうど森博嗣のS&Mシリーズに近いかもしれない。

ミステリアスな事件を解決する過程では、いつもの久城とヴィクトリカのツンデレ劇場が炸裂する。ただ、今回はヴィクトリカが風邪で寝込んでいるということで、遠隔地での電話でのやりとりとなる。弱ったヴィクトリカと、事件解決に必死になる久城。なんだか心なしか、ヴィクトリカのツン具合が今までよりもトーンダウンしているような気がした。というか、回を重ねるごとに、立場的に久城の方がだんだんと上になっているのではないだろうか。シリーズの魅力のひとつでもある、二人の関係の変化も楽しめる作品だ。

ミステリーとしてトリックうんぬんは特別な印象はない。ヴィクトリカが安楽椅子探偵として推理するのは面白く、事件のからくりをわかりやすく説明するための例えも面白い。しかし、基本的には単純なトリックなので、ただ物語を淡々と読んでいくといった感じだ。別に複雑なトリックを求めているわけではないが、事件が解決する直前まで、どのようなトリックがあるのかと悩ませてほしい。このシリーズはライトなミステリーとして、キャラクターのエピソードメインで読むべき作品なので、トリックはどうでもよいというのはあるのだが…。

シリーズとしての牽引力は、ヴィクトリカの秘密にかかっている。




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