ゼロの焦点


 2011.5.11  この昭和の雰囲気は恐ろしい 【ゼロの焦点】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
原作は未読。ミステリの名作といわれた作品が原作ということで、不思議な魅力にあふれている。とくに憲一が行方不明となり、つぎつぎと不可解な事実があきらかとなるあたり、ミステリー小説らしい魅力を感じた。憲一には秘密があり、それが二人の女と関係があるのか。あっと驚くようなトリックや仕掛けではない。ただ、オチにいたるまでに憲一がのこした謎の二枚の写真や、いわくありげな女の存在など、ひきつけられる要素はたくさんある。中でも、憲一の兄が突然何者かに毒殺されるくだりなど、禎子の知らないところで、何かとんでもない出来事が起きているような雰囲気を感じさせられる。昭和初期を表現する特殊な雰囲気と、雪の金沢というのは、この作品ならではの香りをただよわせている。

■ストーリー

結婚式から7日後。鵜原禎子の夫・憲一は以前の勤務地・金沢に戻り、そのまま謎の失踪を遂げる。夫を捜し金沢へと旅立った禎子は、そこで真実の鍵を握るふたりの女と出会う。

■感想
行方不明となった夫の消息をさぐるために、禎子は金沢にやってくる。そこでは夫と親交のあった企業の社長やその夫人、会社の同僚などと共に消息をさぐることになる。まず憲一の残した二枚の写真というのが、いかにも何かありそうで興味をひきつけられる。何も語らない憲一というのも、どこか裏がありそうだ。そして、明るく楽天的な雰囲気をかもしだす憲一の兄の存在が、よけいに禎子に不安をいだかせる。だれがどこまで真実を知っているのか。だれが裏ですべてを操っているのか。昭和初期の雰囲気が、今見ると、変におどろおどろしい雰囲気になっている。

憲一の足どりをさぐりながら、禎子が出会う真実は強烈だ。何も知らないまま結婚したとはいえ、失踪した憲一が金沢でどのような生活をしていたのか。マジメそうな憲一の雰囲気からは想像できないような出来事だが、それだけに、事件には深い裏があるように思わせている。禎子が憲一をさぐりながら、次々とあきらかになっていく真実。犠牲者をだしながらも、真実に近づいていくのだが、やはりこの昭和初期の雰囲気というのが、なんでもない場面であっても、見ているものに恐怖をあたえている。

ラストは壮絶な展開となる。すべてに決着をつけようとするあまり、このパターンしかないのだろうが、それにしてもすさまじい。一人とり残されたかたちの禎子にとっては、辛い結末でしかない。本作に登場する女性3人は、すべてが印象深いのだが、中でもやはり中谷美紀が演じた役は衝撃的だ。その表情と立ち居ふるまいだけで、何かとんでもない恐怖を感じてしまう。サングラスをかけてまっすぐ立ちつくす姿であっても、なんてことないはずが、強烈なオーラのようなものが体からにじみでているようだ。

昭和初期の雰囲気だけで恐ろしい。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp