床下仙人 


 2008.10.1  世にも奇妙な物語的 【床下仙人】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
雰囲気といい、テーマといい、社会風刺的要素がつまっているあたり、そのまま世にも奇妙な物語に出てきそうな物語だ。床下に住みついた男の話である床下仙人にしても、郊外へ念願の家を建てたかと思うとその代償としてハードな仕事からなかなか家に帰れずに…。昨今の社会情勢を反映するように、さまざまな問題を短編として面白おかしく描いている。細部までチェックすると、まったくありえないことだというのはよくわかるが、物語全体の雰囲気として、すべてを受け入れてしまうから不思議だ。それぞれの短編には、ネタばらし的なものがあり、すっきりとする反面、なんだかやりきれないような、不思議な気持ちになってしまう。ちょうど世にも奇妙な物語を見終わって、タモリがエピローグを語るあたりの感覚と同じかもしれない。

■ストーリー

「家の中に変な男が棲んでるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは!そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家団欒のような光景を!

■感想
昼夜なく働き、一戸建てを持とうと思うと郊外へ行かざるおえない男と家族の苦悩と戸惑いを描く「床下仙人」。念願の一戸建ての床下に男が住みつき、やがて家族と親しくなる…。常識的では考えられない出来事が、さも当たり前のことのように描かれている。男もまさかそんなはずはないと思いながら、現実を受け入れざるおえない。同じサラリーマンとして他人事ではない話ばかりが描かれている本作。サラリーマンの悲しさを描きつつも、なんだか少しだけ希望がもてたりもする。ありえないような困難も本作のような不思議な出来事で解決できれば、なんてことを考えてしまった。

本作の中で印象的なのは「床下仙人」と「派遣社長」だ。これこそまさに現代の企業を象徴するような作品である。派遣だらけというのはどこの業界でもそうだが、しまいには派遣しかいない、派遣会社が運営するという冗談では済まされないような結末となっている。現実問題をわかりやすく、そして面白く描いている本作。世にも奇妙な物語的な理不尽さと、主人公たちが目の前に出会う突飛な状況であっても、しぶしぶその状況を受け入れる姿は、まるで事なかれ主義をモットウとする現代のサラリーマンを象徴しているようだ。

ラストの「シューシャインギャング」だけが少しだけ毛色が違っていた。サラリーマンはサラリーマンでも、若者との交流を描く物語で、読み終わるとほんの少しだけほのぼのとした。今までと比べると少し刺激が足りないと感じるかもしれない。しかし、すべてが奇想天外であっと驚く設定や考えられないような状況ばかりでなく、ほのぼのとした流れも良いのだろう。なんでも流行に敏感な若者を揶揄するような表現があるにしても、不思議な魅力があるのは確かだ。

現代サラリーマンの困惑を描く本作。そのまま世にも奇妙な物語で使えそうなものばかりだ。きっと頭の中には床下に潜む長髪の男の映像が浮かび上がることだろう。



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