2010.1.15 泣きを誘う物語ばかり 【約束】
■ヒトコト感想
泣かせようという雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。特に死をあつかう物語は、それだけである程度泣ける要素がある。ただ、そこから泣くまでには、何かもう一つ大きな山を越えなければならないような気がした。例えば、自分が同じ経験をしたとか、今現在の心境に近いとか、それらのことがない限り、なかなか泣けない。まったく別世界の話をされても、なかなか感情移入できないからだ。そういった意味でいうと、本作はなかなか感情移入しにくかった。子供を持つ親であったりすればまた違ったのだろう。ただ、本作で救いなのは、悲しみだけで終わらないということだ。未来に向けてしっかりと進むその第一歩まで描かれているので、爽やかで希望がもてる終わり方と感じてることだろう。
■ストーリー
親友を突然うしなった男の子、不登校を続ける少年と廃品回収車の老人、モトクロスの練習に打ち込む少年を遠くから見守る一人の女性、仕事を抱えながら女手ひとつで育てた息子を襲った思いがけない病…。苦しみから立ちあがり、うつむいていた顔をあげて、まっすぐに歩きだす人々の姿を色鮮やかに切りとった、絶対泣ける短篇集。
■感想
全体を通して人の死を連想させ、涙を誘おうとしている。短編ということもあり、いきなり確信をつくような話から始まるので、いかにも泣かせようとしている雰囲気を感じてしまう。しかし、読んでいくうちにその物語に入り込み、死でお涙ちょうだいの物語を作っているのではないとわかってくる。ただ単純に死で泣けるのではなく、そこにいたるまでの様々な出来事を総合して泣けるか泣けないかが決まってくるのだろう。本作はその死へ向かうまでの道筋がしっかりとできているので、泣ける人は自然に泣けてくるだろう。
登場人物にどれだけ感情移入できるか、当たり前だがものすごく重要だ。本作に限って言えば、自分の中ではあまりピンとくるものがなかった。親友を失った男の子や子供を持つ親など、どれもその心境は想像できるが、やはりどこか他人事の気分になってしまう。身近に感じたり、同じような経験をしていれば確実に泣けたと思うが、そうはならなかった。これが短編ではなく、長編であったなら、物語の細部まで読み込み、しっかりと感情移入でき、泣けたかもしれない。
すべての短編が悲しい終わり方をしていない。死が絡む話なので、どこか陰鬱になるかと思われがちだが、しっかりと未来に希望がもてる終わり方だ。そのため、たとえ泣いたとしても、すっきりとした気分で読み終えることができるだろう。泣くことでストレス解消できるような人は、本作を読んで思う存分涙腺を緩ませしっかりと涙を流し、明るい気分で読み終われば最高だろう。短編ということで、まどろっこしい前置きもなく、そのものずばりがすぐに登場してくる。時間がない人にもうってつけかもしれない。
泣いてストレス解消したい人は、泣く準備をしていればしっかりとストレス解消できるだろう。
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