約三十の嘘


 2009.9.15  舞台から脱却できていない 【約三十の嘘】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
場面展開は駅と列車内だけという、さすが舞台が原作だけのことはある。詐欺師たちが集まり、大金を稼ぐために協力し、その大金をめぐって様々な思惑が動き始める。この手の作品では、設定にどれだけ面白さを感じることができるかにかかっている。詐欺師同士が集まり、不良品の羽毛布団を売りさばき、その売り上げを奪い合う。ところどころに台詞回しが面白い箇所はあるが、基本的にどれだけキャラクターに感情移入できるかだろう。後半のスーツケースの中身が消えたトリックにしても、特別な驚きはない。もうひとだましあるのかと思ったが、そのまますんなりと終わってしまった。出演者に金をかけ、あとはどれだけシチュエーションで面白くできるか。監督の手腕の見せ所だったのだろうが…。

■ストーリー

大阪駅構内に集まった詐欺師5人が、寝台特急に乗り込んだ。京都駅からはボインという愛称の今井も合流。綿密な打合せ後、彼らの「仕事」は成功をおさめたが、帰りの列車の中で、大金の入ったスーツケースが紛失してしまった・・。

■感想
あっと驚くような最後にしてほしかった。終わり良ければ全て良しではないが、最後が締まると、作品すべてが良かったように思える。今回は、ラストの大どんでんがえしを期待していたが、それはなかった。個々のキャラクターはそれなりに立っていたが、ひりつくような対立関係ではなく、仲良しクラブのようになっていたのが残念だった。だましだまされ、相手の裏をかき、そのまた裏をかかれる。そんな流れで、最後の最後に大きなトリックがある。そうならなければ、狭い場所でちょこまかとやっていて、スケールの大きさを感じることができなかった。舞台だけで十分のように思えてしまった。

豪華出演者で金を使い、撮影には金をかけない。わかりやすい作品だ。キャラクターたちのくだらない言い合いや、関係のないことに脱線するくだりは面白かった。特に「ボインちゃん」だの「パインちゃん」だのくだらなかった。ギャグなのか、それとも真剣なのかわからない場面もあった。そんな中でも、この手の作品は、もっとも意外な人物が最後に勝つというのが定番なので、必死に伏線が張られていないかを目を皿のようにして見続けていた。しかし、そんな期待とは裏腹に、わりと当たり前の人物が裏ですべてを仕切っていたというオチだった。

舞台的には面白いのだろう。制限された空間で繰り広げられる頭脳戦。売り上げを最初から皆で分けていれば、なんて無粋なことをいうつもりはないが、強引なのは強引だ。お互いの詐欺師としてのキャラクターの確立もいまいちだった。このキャラはどんな特殊な能力があるのか。作中で登場したのは手品ができるイマイくらいなもんだった。この詐欺師集団に真実味がないのも、なんだか楽しめなかった原因のひとつかもしれない。もし、仮に、個別にキャラ立ちするようなエピソードがあったとしたら、また見方も変わっていただろう。

舞台から脱却できなかった作品なのだろう。



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