2009.10.10 現代っ子の未知な部分 【うつくしい子ども】
■ヒトコト感想
ニュータウンで発生した殺人事件。犯人として歩道されたのは十三歳の弟。この部分だけでもかなり問題作というか、衝撃は大きい。にもかかわらず、本作にはさらなる襲撃が待っている。人によってはちょっとやりすぎだと感じるかもしれない。現代っ子の未知な部分をこれほど端的に表現している作品はない。本作を読み終わったとしても、決して納得できるようなものではない。それでも、現実に起こりうることかも、という思いはすてきれない。少年犯罪うんぬんというよりも、それを生み出してしまった社会に対して警告するような作品だ。自分が子を持つ親になったとき、子どもに対してどのような接し方ができるだろうか。戸惑いを感じずにはいられない。
■ストーリー
緑豊かなニュータウンを騒然とさせた九歳の少女の殺人事件。犯人として補導されたのは、ぼくの十三歳の弟だった!崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校…。殺人者のこころの深部と真実を求めて、十四歳の兄は調査を始める。
■感想
九歳の少女の殺人事件。その犯人が十三歳の弟だという衝撃。まず、この事件を起こした当事者の家族たちの思いというのが、しびれるほど伝わってきた。ジャガが感じるのは、周りから奇異な視線をあびせかけられる妹や両親のことではない。弟がそんな事件を起こしたことに対して、被害者に対して申し訳ないという気持ちもあるが、母親が悲しむということに衝撃をうけている。これは、ある意味、人が犯罪を犯さないための抑止力の一つだろう。家族の絆が抑止力を強める。十三歳という少年ならば、なおさらそうなのだろうが、抑止力を突き破るほどの何かがあったのだろうか。
衝撃的事件であることは間違いないが、それよりも、その後の展開にさらに驚いた。事件の黒幕ともいうべき人物と、それを囲む生活圏。普通では考えられないことだが、もしかしたら今の中学生はこんなこともありえるのかもと思えてしまう。大人を出し抜いて、自分の思い通りにしようとする。幼稚な思考原理のはずなのに、本作ではやけに説得力がある。礼儀正しい言葉遣いが、少年らしさを打ち消し、そして、大人と同等の雰囲気をかもし出す。非の打ち所のない優等生ほど恐ろしいものはないということだろうか。
ショッキングな事件がテーマだけに、どうしても現実の事件とのつながりを考えてしまう。実在の事件を連想させるような描写もあり、確実に意識しているのだろう。本作を読んだからといって、実際の事件の当事者の気持ちがわかったわけではない。しかし、加害者家族たちや、そのクラスメイトたち。そして、容赦のないマスコミの力というのが、事件後に大きな影響を与えているのは容易に想像できる。そして、読めば読むほど、この年代の少年たちの心がわからなくなってくる。未知の恐ろしさがあふれ出てくるようだ。
少年の心の闇は、結局最後まで理解できなかった。
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