裏切り者


 2009.11.26  胃が痛くなる社会派サスペンス 【裏切り者】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
事実にもとづいた社会派サスペンス。汚職事件や裏取引、社会の現実を赤裸々に表現している本作。服役を終え、真っ当な職につくはずだったレオ。自分の仕事を全うするウィリー。そして、家族と会社を守りたいフランク。みな悪人ではない。裏社会との巧妙な取引と、それによって犠牲になりかけた青年。保身に走るのではなく、真実を貫くべきなのか、それとも流されるべきなのか。レオの立場となると、非常に胃が痛くなる。自分を信じてくれる母親と、その期待を裏切ってしまったレオ。全てに嫌気がさし、清廉潔白な人生を送ろうと最後の決断を下したのだろう。この世は口先だけ正義というのは誰でもできる。裏では賄賂や汚職など、当たり前のことのように起こっている。身につまされる社会派サスペンスだ。

■ストーリー

実際に起こった汚職事件を基に描いた社会派サスペンスドラマ。服役を終えた青年は叔父の会社に勤めていた。会社が関わった入札をめぐる裏工作が青年の人生を狂わす事件へと発展する。

■感想
服役を終え、これからマジメに働こうとするレオ。しかし、羽振りが良く綺麗な彼女がいるウィリーに憧れの気持ちを持つレオ。この時点で、レオは決定的な間違いを犯している。すぐに目がでないが、地道な仕事である修理工を断り、ウィリーと同じ仕事をしようとする。ウィリーは札付きの悪というわけではなく、会社を成り立たせるためには、必要な人材だった。ウィリーに憧れるレオというのが、見ていてとても不快で、あとあとの出来事を自業自得ではないのかと思わせる。

レオの軽率な行動は悪いのだが、そのことを忘れさせる様々な出来事がある。企業全体ぐるみの不正。区長や警察を含めた汚職。会社を守るために賄賂や汚職が恒常化し、その違法性に気付きながらも、誰もやめることができない。レオに至っても、ただその習慣に流されるだけ。悪いことと知りつつも、流れに身を任せるしかない。レオが窮地に立たされたとき、頼りにしていたはずのウィリーやフランクは自分を守ることに終始する。そのときになってはじめてレオは血も涙もない現実を知ることになる。この時のレオの絶望感が、のちの決断へと導いたのだろう。

事実にもとづいた本作。ラストの告白の場面では、どれほど世話になった恩人だろうが、たとえ大事な家族だろうが、レオは真実を包み隠さず話したことだろう。もし、真実を告白せず、すべてが丸く収まったとしても、それは一時的なものであって、いずれレオはウィリーと同じ末路をたどることになっただろう。ものすごく現実社会にリンクしていると思った。その場しのぎや、何かを守るために不正に手を染める。その時点ですでに抜け出せない不正の螺旋へと飲み込まれているのだろう。レオは不正の渦から抜け出すことができた、数少ない証人ということだ。

この世に不正は絶対になくならないと思うが、本作は不正に対してNOと言う勇気を与えてくれる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp