劔岳 点の記


 2010.9.21  壮大な雪山と冷めた結末 【劔岳 点の記】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
壮大な雪山の景色。前人未到の山に登る男たちの物語。単純に富士山よりは標高が低いので、たいしたことないだろうというのは素人考えだ。富士山のように登山道があるわけでもない、断崖絶壁をひたすら登り続ける男たち。どこよりも早く登れという軍のプレッシャーにさらされながらの登山。山岳会との競い合いが人間ドラマに深みを与えているが、熱さというものをほとんど感じなかった。まるで雪山の映像そのままに、山頂を目指すという熱い思いが伝わってこなかった。髭が伸び放題でボロボロになりながら登る姿には心打たれるが、何かをやり遂げたという大きな感動は少ない。もしかしたらそれも演出の一部なのかもしれないが、一つのことに邁進した結果の思いにしては、やけに冷めているように感じた。

■ストーリー

ひたむきに歩め、前人未踏の頂へ。標高2999メートル、氷点下40度。日本地図最後の空白地点を目指した男たちの、魂の記録。

■感想
前人未到の山に登るには様々な苦難が待ち受けている。決して登ってはならない山だという古い言い伝えや、明確な登山道がない山道。変わりやすい山の天気に、登山メンバーの気持ちの違い。危険極まりない山道をひたすら歩き続ける男たちを見ると、人間ドラマだとか、山岳会との争いだとかそんなことはどうでもよくなってくる。ただ山に登ることだけが目的ではなく、その先には地図を作り上げるという大きな目的がある。真摯に目的の遂行だけを願う男たちの気持ちはヒシヒシと伝わってくる。

山に登る男たちに対して身勝手なことばかり言う平地にいる者たち。しかし外野のざわめきなどどこ吹く風で、ひたすら登り続ける男たちにはすさまじい執念のようなものを感じた。軍の測量部だけでなく、案内人も含めて一つのチームとして劔岳に挑もうとしていることがはっきりとわかる。ただ、すばらしい雪山の映像と、苦難に満ち溢れた登山に比べると、人間ドラマと表に出すべき情熱というのが足りないような気がした。とんでもないことに挑戦しようとする男たち。そこへ挑戦する決死の覚悟というのがわかりやすい表現の仕方ではなかった。

ラストには山岳会との登山競争のすえ、ある結末に行き着くのだが、感動や驚きは少ない。それは結末のせいかもしれないが、今までの苦難を思い出し、叫びたくなるような大きな感動というのが伝わってこなかった。苦労に苦労を重ね、やっとたどりついた頂点。そのとき、ボロボロになりながら到達した男たちはどういった気持ちでいたのだろうか。生半可な道中ではなく、生死の境をさまよいながらの山道。悔しさも含め、あふれ出すような感情がそこにはあるはずだが、伝わってこなかった。ひどく冷静に、ひっそりとした結末のように感じられた。

強烈なインパクトを残すのは、顔中を髭に覆われた男たちの姿だ。




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