九十九十九 舞城王太郎


2010.11.18  正直、何がなんだかわからない 【九十九十九】

                     
■ヒトコト感想
正直、何がなんだがわからない。清涼院流水の作品を読んだこともなければ、ヨハネの黙示録についても詳しくないので、どの部分に面白さを見出せばよいのかわからない。ストーリーはあって無いようなもの。中盤から本作の仕組みがわかってきたが、だからといって興味をそそられたりはしない。600ページ近い厚さでありながら、結局どんな物語であったかと説明するのが難しい。本作をしっかりと理解するには、しっかりとした予備知識が必要なのだろう。何でもかんでも強引に「見立て」を行い、さも正しいように推理する名探偵小説に対してのアンチテーゼなのだろうか。作者の作品には慣れていたつもりだったが、本作は違った意味で度肝を抜かれた。

■ストーリー

「苦しさを感じるなら、僕なんて愛さなくていいんだ」。聖書/『創世記』/『ヨハネの黙示録』の見立て連続殺人を主旋律に、神/「清涼院流水」の喇叭が吹き荒れる舞台で踊りつづける超絶のメタ探偵・九十九十九の魂の旅が圧倒的文圧で語られる。

■感想
作者の作品は多少荒唐無稽な部分があり、激しい残酷描写があるのはわかっていた。しかし、本作ほど強烈で意味不明で、内容がよくわからないとは思わなかった。もしかしたら一回読むだけではだめで、二回三回と読むことで面白さが理解できるのだろうか。一つの物語が始まりある程度の決着がつくと、それらはすべて小説の中の話だったとなる。そう主人公が語る物語自体も、小説ということになっている。結局この作品はなにがしたいのか。最後に結論めいたことが描かれるのではなく、最後の最後までよくわからないまま進んでいる。せめて時系列に進んでくれればまだ理解のしようがあったが、それすらも破られるとなると、もうめちゃくちゃな印象しかない。

清涼院流水の作品を読んでいたら違った感想をもったのだろうか。それとともに知りたいのは、清涼院流水のファンが読んだらどう思うかということだ。好きな作家がめちゃくちゃな扱いを受けて楽しめるのか。清涼院流水以外にも有名作家の名前は登場するが、清涼院流水ほどひどい扱いは受けていない。恐らく許可はとっているのだろうが、この内輪ネタ的展開は、評価が大きく分かれるだろう。見立ての連続殺人事件がなんだか既存の名探偵小説を揶揄しているようで面白いが、それすらもあまりに強引すぎてほとんど理解できないというか、コメディにしか思えなかった。強烈なインパクトはあり、一度読んだら忘れられないが、面白いからではなく、特殊すぎるからだ。

ヨハネの黙示録や聖書など詳しくないが、仮に詳しい人が読んだら楽しめたのだろうか。小難しい言葉を並べたて読者を煙に巻く。作者の作品の特徴として圧倒的なスピード感があったが、本作に限っていうとその弁当箱のような厚さによって読んでいて辛さばかり感じてしまった。「あー、まだまだこの流れが続くのか」というのが正直な感想だ。せめて最後にすべてをひっくり返す何かがあっても良かったと思うのだが、何もなくあっさりと終わってしまう。この作品が世間にどれほど受け入れられているのか、世間の評価がかなり気になってしまう。

作者の今までの作品を越えた、あまりに特殊すぎる作品だ。



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