血と骨


 2008.8.26  たけしの強烈なキャラクター  【血と骨】  HOME

                     

評価:3

■ヒトコト感想
強烈なインパクトを残す金俊平。やはりビートたけしだからこそ、だせた雰囲気なのだろう。すべてこの金俊平のキャラクターの強烈さに引っ張られている本作。パターン的には若いころに暴虐武人に振舞うかわりに、晩年は仕返しをくらい、とんでもなく落ちぶれるというのが定番だが、本作の金俊平はあくまでも最後までしっかりとその強硬さを保ったまま生きていく。体がボロボロになろうと、どれだけよぼよぼになろうとも金に執着し、相手をさげすむ態度にかわりはない。見ていると作品に引き込まれていくが、その時代に幸せな印象は無い。息子だけが一人まともに見え、それがやけに物悲しく感じるのも、引き込まれていた証拠かもしれない。

■ストーリー

1923年、祖国・朝鮮の斉州島を離れて日本の大阪に渡ってきた金俊平(ビートたけし)。金と色の欲に満ち、己の肉体のみを信じ、常識や道徳のかけらもないこの男は、戦前戦後と家族や町の中で君臨し続けていく…。

■感想
多少誇張されているとはいえ、実話ということで、この金俊平の強烈さはそのままなのだろう。ビートたけしといえば、監督主演として暴力的な映画に数多く出演しているので、特別目新しいキャラクターというわけではない。しかし、周りの人々を圧倒するその存在感だけは特別かもしれない。ランニング姿でふらふらと歩くさまは、歳を感じさせながらも肉体的な強さというか、骨太で自然に鍛えられた凶器のような雰囲気さえ漂っていた。この雰囲気に対抗できたのは、オダギリジョーだけだった。

昭和初期のなんともいえない雑多な雰囲気と、そこに突如として現れる異質な存在。金俊平の暴虐武人さを通して、その時代を風刺している。かまぼこ工場をつくり、長屋に住みながら愛人を囲い、、成金が登場する。理不尽なことがあったとしても、暴力で大怪我をしたとしても、家がボロボロに壊されようとも、朝鮮人が住む長屋の中では治外法権的だったのだろうか。金俊平の暴力を通して昭和の時代を感じることができ、そのすさまじいあふれでるパワーは画面からにじみ出ていた。

金に汚く、己の肉体のみに生きる男、金俊平。この男が異様にこだわったのが金と子供だ。愛人に対して子供を生ませまくり、唯一最後まで純愛を貫いたと思われる清子に対しても、子供が生まれないことに腹をたてていた。実の息子との関係を無視し、あくまで愛人に息子を生ませようとする。このあたりは、昔ながらの考え方なのか、自分の跡取りという意味で男の子を欲したのだろうか。今現代ではちょっとこの感覚はあまりないかもしれない。時代と共に移り行く価値観の中で、子供、特に息子に執着するのは時代的なものだと勝手に考えた。

あまりに金俊平が強烈なので、他のキャラクターがかすんでしまうほどだった。そんな中でもオダギリジョーのキャラクターだけはキラリと輝いていた。



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